NPO 21世紀水倶楽部
2005 DSP セミナー「第1回ディスポーザー調査報告会」

2005年12月7日(水) 13:30〜16:30,砂防会館 別館3F「立山」

 下水道施設へのディスポーザー導入の可否について,国土交通省の基本的な考え方が公表されたことを受けて,NPO法人21世紀水倶楽部では,同省の調査報告についての説明会を下記のとおり開催いたしました。



式次第

講演1『ディスポーザー導入による下水道施設への影響
  講師:国総研下水道研究室 農博 吉田綾子研究官

講演2『ディスポーザーを用いた資源循環型社会の提案
  講師:荏原実業(株)企画・開発室長 廣本真治郎氏

質疑応答
  司会進行:工博 清水 洽氏
     ●厨芥発生量について
     ●管渠内への堆積について
     ●ディスポーザー導入のコストメリットについて
     ●ディスポーザーの導入について
     ●ディスポーザー導入による環境評価について
     ●ディスポーザー設備について


主催:NPO法人 21世紀水倶楽部 ITグループ

参加人員:76名
(行政関係者14,関連団体7,会員16,賛助会員9,一般21,スタッフ等8)

※土木学会継続教育(CPD)の認定プログラム(認定番号:JSCE05-484)





《 ディスポーザー導入による下水道施設への影響 》
国総研下水道研究室 農博 吉田綾子研究官


 処理槽付きディスポーザーを設置したマンションが急増している現在、ディスポーザーそのもののが一般に知られるようになってきている。そのため、下水処理場や管渠等への影響が懸念される直投型ディスポーザーについても導入の是非を評価する必要性が増している。そこで、国交省は北海道歌登町をモデル地域とした「ディスポーザー導入の社会実験」を平成12年から開始し、追加調査の平成16年を含めて5年間実施した。そして、社会実験の成果と最近のディスポーザーに関する調査研究の知見を整理し、ディスポーザー導入時の影響評価の方法を提示した技術書「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」を作成した。この技術書は評価委員会の審議を経て、平成17年7月に公表されている。

 本講演会では、社会実験での調査結果が中心に、ディスポーザー導入時の影響評価を行う上で最も基礎的な情報となる「ディスポーザー排水の原単位」、これまでに実際の下水道施設での導入事例がなく知見が少なかった「管渠への影響」について概要が説明された。「ディスポーザー排水の原単位」ではディスポーザー排水の水質調査及びごみ量・ごみ質調査、「管渠への影響」では管渠内堆積物の状況、掃流特性について報告された。なお、社会実験を実施した歌登町の概要、歌登町におけるディスポーザーの使用実態、使用水量を把握するための住民アンケート調査の結果、排水設備に関するトラブル事例についても報告された。




[Back to Top]

《 ディスポーザーを用いた資源循環型社会の提案 》
荏原実業(株)企画・開発室長 廣本真治郎氏

  ディスポーザーを用いた資源循環型社会への提案をテーマに講演された。話の内容は主に農業集落排水処理施設に及ぼす影響にテーマを絞って話され、調査の継続として行なわれている住民へのアンケート調査結果、主なディスポーザーメーカーの仕様と外観とかディスポーザーの仕組みと特徴の紹介があった。最後に直投入型ディスポーザーを普及させて行くための課題と、21世紀水倶楽部が中心となってそれらのまとめ役として、直投入型ディスポーザーの抱える難題をどう払拭して行けるのか等の提言が行われた。

 処理施設への影響として、ディスアドヴァンテイジとして汚濁負荷の増加、管路内での固形物の堆積、ポンプ等機器類への影響、余剰汚泥の量と性状の変化も考えて置かねばならないし、処理場とか管路の維持管理技術も改善する必要も部分的にでてくる。処理場にとっては、夾雑物の除去と可溶化の促進、余剰汚泥のコンポスト化による緑農地還元、肥料価値の向上というコンセプトが必要であり、これによって緑農地還元から食卓へ、食卓から台所へ、台所から緑農地還元へと資源循環のサイクルを形作る必要がある事を強調された。

 ディスポーザー導入一年後の住民へのアンケート結果では、生ごみは減っている、行政の収集回数は減っていない、機器の故障の心配がある、水道・電気代の上昇が心配、便利な機器である、衛生的である、台所周りが広く清潔になった、各種家電製品との利便性でも遜色はなく希望許容購入価格帯(本体と取付費)として7万円以下という結果が得られた。生活が便利になったというが、お金に換算すると幾らぐらいか44%以下の人が500円以下、67%以下の人が1000円以下との回答であり、利便性についても高い評価がつけられている。主なメーカーの仕様と外観の違いについては、運転方式、電動機出力、本体高さ、給水方式等の違いについて説明された。

 直投入型ディスポーザーの普及における課題として、流通経路、販売形態が種種雑多であるので新しいルールが作りにくい。設置率を高めるため住民が購入可能な価格設定が必要である。また、直投入型の普及方法の構築や行政と住民が一体となった資源循環の意識の高揚、住民を悪質な訪問販売やネット販売等から保護するため設置台帳の整備、施工方法等についても宅内の桝の改造の標準化等の必要性についても話された。

 直投入型ディスポーザーを健全に普及させるための仕組みづくりの構築のため、また技術レベルや普及の考え方を共通化していく会を作っていく必要があるのではないか。その際、当21世紀水倶楽部のある程度の音頭取りなりリーダーシップを期待したいとの提言があった。




[Back to Top]

《 質疑応答 》
【文責:NPO 21世紀水倶楽部ディスポーザー分科会】


●厨芥発生量について

Q.根拠となる厨芥量一日250gが220gへと少し減っています。今の生活様式の変化で減ってきているのでしょうか。もう一つ、分別ごみとか可燃ごみの中にもディスポーザーに入れるべき物が入っていたということで、もっと徹底したら下水負荷が減るのでしょうか。
A.(吉田講師)220gというのは歌登町の結果であって、標準的な排出量250gは、様々な文献値や廃棄される組成等から非超過確率75%値を用いて設定されている。歌登町の220gは平均値であるので非超過確率75%という考えをすれば250gに近いとも勘案できる。従って、発生量として現在推奨されている250gは可成りいい値ではないかと思う。ただこの数値は歌登町で調査した一点の調査結果であって、なかなかごみ集積場でのごみの組成調査が出来る自治体、またそういう協力を得られる環境というのは得にくいのが現状であるので、投入厨芥率がどの位であるか検証していく調査を提案していくのが難しいのではないかと思っています。

[Back to Top]


●管渠内への堆積について

Q.吉田さんからも話がありましたが、毎秒60p位の流速があれば管の中は掃流されるという事でしたが、実際私ども下水道管を管理していますとよく油が使われるところではそのまま流して管の中で実際詰まってしまうことが年に時々あります。オイルトラップを作って流してもらう事になっているのですがこれも仲々難しい問題で、さらに生ごみが流れてくることによって閉塞回数が増えないか大変心配であることが一点あります。
A.(吉田講師)歌登町の場合、管渠の状態がいい地域でしたが、現状で詰まりがあるとか管渠に問題がある地域では、異常にどこに貯まるか等、清掃頻度も当然変わってくるでしょうし地域毎の影響評価も非常に重要になってくると考えています。

[Back to Top]


●ディスポーザー導入のコストメリットについて

Q.生ごみはディスポーザーをつける前は何らかの形で処理場に週2回ぐらい運搬されていたと思います。導入された場合、そのようなことが減るので、運搬経費等の節減率のデータはどうだったのでしょうか。
A.(吉田講師)歌登町の場合小さな町でパッカー車が一台で全町を回っていたので運搬の走行距離への寄与率は低くそれは変わりませんでした。現状では厨芥はごみ集積場にも残っているので、衛生的な観点からもごみの収集回数を減らすとかごみの回収状況を変えるという状況にはなっていません。量的には厨芥は重さはあるが嵩がないのでパッカー車の数を減らすとか、どの位寄与するとかについては十分な検討が必要ではないかと思います。

○ 水道料金も下水道料金も払っているがごみは無料で集めている。生ごみを下水道に流す分だけ下水道料金に上乗せしていいのではないか。ごみ焼却の燃費節減、生ごみステーションの周囲の悪臭、住民被害、それに対する行政の対応も減り、収集量や収集頻度も減るから職員の労働時間数、収集車の台数も減ると考えられる。そういった意味で生ごみの方でトータル的にコストダウンになった分だけ下水道に料金を上乗せする考え方もあるのではないか。

[Back to Top]


●ディスポーザーの導入について
Q.廣本さんの話を聞いていて私自身の疑問であるが、ディスポーザーが有効に機能する、住民の方が利便性豊かな物だと感じてもらうその元になるのは、それが繋がる下水道が完全な物であることが条件となる。それを満たすのは、少なくとも、分流であること、都のように合流であれば雨天時の汚濁物の流出も問題で、処理場へも多く入ってくると言われ、その点はどうかなと感じる。今、多くの自治体で下水道が完全な物ではないので使い方に気をつけて下さいということで、例えば、油を流さないでとか、キャンペーンまで張ってそれに対して住民の理解が得られつつある。しかし、そういう物に対してともすれば、生ごみはいいよとなると、そういった物もかなり入ってくる可能性があるのではないか。いずれにしても、これはメーカー側の意見と下水道を管理する側の意見とは両者が同じテーブルの上について侃々諤々とやったという話も聞いた事がないが、もうそう言う時期になっているのではないか。行政側も及び腰だし何かメーカー側も後ろめたいような感じで何とかしなくてはと言うところもあるので、出来るだけ早くその辺の所を意見調整すべきではないかというのが私の意見である。
A.(主催者)私も同じ意見で、やはり合流式の大都市ではそう簡単にOKするような物ではない。流域下水道とか完全分流でないところがある。大部分は分流であるが一部合流区域を抱えている場合、導入して良いのかどうか今の調査の結果に基づいて、悪影響がたいしたものでないと判断された場合には、市町村の判断で使われていく場合もあるでしょうし、そういったことも含めて今後考えていくべき事だと思う。今回の説明会には、完全に分流式の都市で自前の処理場を持っていて、しかも相当昔に稼働しており運転管理にも高度の技術的蓄積を持っておられ、下水道の普及もかなり広範囲に進んでいる関東地区の都市を対象にこの説明会をさせていただいた。

Q.今の質問ともラップするが、今回のこの会の案内の中に国土交通省さんが下水道施設へのディスポーザー導入の可否について基本的な考え方を公表された。それに基づいて今回開催するというご案内であったがその基本的考え方をお聞かせ頂きたい。
A.(主催者)それは、私が案内文を出したのですが、今、吉田さんに調査結果を報告して頂きましたように調査の仕方、物の考え方をはっきりと国交省として示されたわけです。それに基づいて各市町村が施設に余裕があるか分流式かとかを判断されて導入の可否を決められる訳です。それに対してNPOとして技術援助や情報提供を考えている。

○ 大都市や県庁所在地等、合流式の所でもディスポーザーを取り入れるという視点から、雨の日には使用を控える等の社会実験や合流式下水道の新たな改善の目標としてディスポーザーを導入するための合流改善はどこのレベルまでいいかといった点も併せて検討する必要があるのではないか。

○ 環境の問題として考えた時、ディスポーザーをつけて生ごみが瞬間に流れてしまうから自分の所に残らないので物を大切にしようとか、出来るだけごみを出さないようにするという意味で、出すまでにごみを減少させるというか、インセンティブが無くなって来てしまうのではないかと考えており、今問題になっている環境問題から考えると生ごみを流すことによって、油分とも混ざって管渠の閉塞が発生した場合どうなるのかなと心配である。

[Back to Top]


●ディスポーザー導入による環境評価について

Q.ディスポーザーが世の中に受け入れられるためには、下水道システムをより将来的に望ましい形に変えていく事により、このディスポーザーのシステムが受け入れられていくことが一つの目標ではないか。そういうことでは、歌登の実験では資源循環型社会と言うことを現場として謳い込むところがどうだったかなと思うが、多分、消化ガスなどを取り入れれば資源循環型社会に近いシステムを組む事が出来る。あるいは、既に議論されていると思うが下水道の中のC−N比とかC−P比とか高度処理をより完全に達成するためによりバランスが良くなるとか、そういった点を一緒に主張して行くのも必要なのかなと思う。
A.(吉田講師)歌登の場合は、メタン発酵がなかったので環境評価の所まで至らなかったかもしれないが、生ごみは汚泥再生処理センターの方へ流れる仕組みになっていて、汚泥もそこで生ごみと一緒にメタン発酵が行われ、残りはコンポストの処理系統になっている。今回は、ごみを生ごみでダイレクトで持っていかなかったことによりメタン発酵のエネルギーには成らなかったが、その前の生ごみの粉砕機の電力の削減にはなった。処理システムの所では、処理場にメタン発酵がなかったことは環境評価の点では出来てないところがあって、仮想地区としてメタン発酵がある場合のLCA評価の所は別途行っている。

○ 生ごみの含水率は70%程度であり、それをごみ処理施設で焼却する際には燃料が必要であるが、可燃ごみだけであれば流動焼却炉では自燃し、その熱をエネルギー源として利用できる。そう言った意味で生ごみをディスポーザー処理して焼却炉に入れないことは重要だと思う。また、ディスポーザーを利用すれば、室内での臭気も発生せず衛生的にもいいことだと思う。家庭排水主体の処理場であれば、ディスポーザーを使ってコンポストなりを作って有効利用したり処理施設の汚泥を嫌気性発酵してそのメタンガスを熱利用したりするのは非常に有効なことだと思う。そういう点からもディスポーザーは進めていくべきだと思う。
○ 確かに私個人的に考えても、消化槽を持っている処理場であれば生ごみが入れば当然下水汚泥のエンタルピーが上がるのでガス発電も増えるのではないか、トータルしたら流動焼却炉のエネルギーもメタンガスで回収したら下水汚泥のエンタルピーも上がるが、一方水質面ではマイナスになるが、汚泥側から見ればエンタルピーを上げるのも一つの方法かなとの考え方も出来る。

[Back to Top]


●ディスポーザー設備について

Q.ディスポーザーそのものについて騒音基準、振動基準、モーターの性能基準、破砕基準なり、普及させるためには、協会づくりの話もあったがそこで統一基準なりを作ってはどうでしょうか。
A.(廣本講師)生ごみ処理システム協会さんの方でそのようなスタンダード的なものをお作りになっているのではないかと思うが、直投入の方はまだまだこれからで無いに等しいのが実情かなと思う。

Q.残飯を入れると糊のようにへばりついてしまという記事を以前見たが今の性能はどうなっていますか。
A.(廣本講師)ぬるぬるした糊状の物、柔い物に対しても問題ない。

Q.水を蛇口から流すのではなくスイッチがオンすると自動的に水が流れるようにしたらどうか。1社そのような製品があったが。水を蛇口から流すのはどういう訳でしょうか。
A.(廣本講師)宅内配管の詰まりという問題もあり、メーカーの方も自動給水装置を付加していく機運もある。そのようなオプションは住民の選択になっていくと思う。

Q.ディスポーザーの耐用年数は幾らぐらいか。今、マンションに住んでいるので高圧洗浄をする場合どこからするのでしょうか。
A.(廣本講師)耐用年数は各社各様であるが当社としては保証期間5カ年間である。高圧洗浄については、やはり配管の所からだが水漏れのご指摘もあり検討する。





[Back to Top]