21Water 200609 DSP Seminar Main
NPO 21世紀水倶楽部
2006 DSP セミナー「北海道地区ディスポーザー説明会」
2006年9月13日(水) 10:30〜12:00,かでる2-7(北海道道民活動センター)730号室
国土交通省・国土技術政策総合研究所から『ディスポーザー導入社会実験に関する調査報告』『ディスポーザー導入時の影響判定の考え方』が平成17年7月に公表されたことに伴い,各地でディスポーザー(DSP)の導入について検討されている。
DSP機器を家庭に取り付けることにより市民生活の利便性と快適性は格段に向上することが予想される。とくに寒冷・積雪地においては,ごみの家庭内での保管あるいは公道での収集時のトラブルの解消には極めて有効なものと考えられる。しかしながら,DSP機器及びその設置費用が比較的高額であることに加え,下水道収集システムの整備の状況,下水処理場の施設能力などの要因によっては慎重に対応しなければならないケースも多々存在する。
当NPO法人DSP分科会では,直接投入型を念頭に置いたDSP説明会を開催し,基本的な取り組み方針と導入のための実務上の一提案を行った。
開催日時:平成18年9月13日 午前10:30〜12:00
開催場所:「かでる2・7」730号室
主催 :特定非営利活動法人「21世紀水倶楽部」
後援 :(社)日本下水道協会,(社)全国上下水道コンサルタント協会
参加人員:63名(下水主管部関係者54名,個人会員・賛助会員等9名)
《式次第》
『あいさつ』
NPO法人21世紀水倶楽部 監事 奥井英夫
講演
1)『ディスポーザーと行政サービス』
北海道大学大学院工学研究科 教授 高橋正宏
2)『北海道におけるDSP』
北海道建設部まちづくり局都市環境課参事 武智弘明
3)『ごみ問題とDSP普及・促進策につての提案』
法人賛助会員・日本上下水道設計(株) 田崎滋久
4)『DSP機器の性能と設置のポイント』
個人会員・荏原実業(株) 廣本真治郎
質疑応答
司会進行:個人会員 内田信一郎
《 あいさつ 》
NPO法人21世紀水倶楽部 監事 奥井英夫
- 「21世紀水倶楽部」は,東京都認証の特定非営利活動法人(NPO法人)であり,国・東京都・横浜市のOBらを中心に4年前に設立。現役の公務員の立場では発言しにくいことを,一個人として提言していきたいと考えている。
- 当会では,ディスポーザー(DSP)だけではなく,5つの分科会があり,それぞれのテーマで活動を行っている。
- DSP分科会の活動としては,昨年12月に1回目のセミナーを開催し,本日が2回目のセミナー活動となる。本日は,北海道内の下水道主幹部の方々中心に集まっていただいており,4名の演者にご講演いただく。
- 高橋教授:(旧)歌登町でのDSP社会実験を執り行った国総研の下水道部長から,現在は北海道大学教授。元公務員,現在は学識者としての立場から。
- 武智氏:DSPに対して関心の高い北海道地区において,道で実施した調査結果や,道の考えについて。
- 田崎氏・廣本氏:21世紀水倶楽部の会員(法人会員あるいは個人会員)より情報提供。コンサルの立場からごみ問題とDSPに関して一つの提案。メーカーよりDSP本体そのものについての情報。
講演1) 《 ディスポーザーと行政サービス 》
北海道大学大学院工学研究科 教授 高橋正宏
- 国交省では,(旧)歌登での調査以前,十数年前からディスポーザー(DSP)については検討を行ってきていた,昨年7月に「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」という形で公表され,関心が高まっている。
- 月間下水道では,11月号でDSP特集が組まれる予定ということで,本日配布の資料も,準備している掲載記事を多少アレンジしたもの。
- DSPは,行政サービスの一つであり,行政サービスというものはコストを要する。特に,昨今の行財政が厳しい折,サービス内容にコストが見合うかどうかをきちんと検討しなくてはならない。
- 下水道管理者として,様々な懸念事項(管渠の詰まり,腐敗臭の苦情,処理トラブルなど)があるのは当然。町全体としてのプラス・マイナスを考慮すべき。
- 全体像をつかむ必要がある。高齢化社会,都市域の人口集中において,コンパクトな住居圏が必要であり,生ごみの扱いは課題。DSPは解決策の一つに成りえる。町域が広いところで,生ごみはDSPとし,可燃ごみの収集回数を減らす可能性。下水道インフラの活用(管渠=有機資源の収集,処理場=再資源化工場)としての位置づけ。多くの技術開発が行われており,将来的に再生工場としての姿はありえるのではないか。
- 下水道への影響についても社会実験で調査された。正常に管理されている管渠や排水設備では特に問題ない。たわみや逆勾配では懸念あり。ただし,そのような箇所ではDSPの有無に係わらず懸念がある。古い家屋など,宅内配管が逆勾配となっている場合などあり,詰まり等のトラブル苦情は寄せられる。初期のクレームとして割り切ればいいが,導入時には必ずある。
- 汚濁負荷についても資料に提示した。汚泥処理まで含め,下水処理場の容量設計をもう一度ということ。十数年前建設の処理場については概ね余裕があるので対応できると思われる。
- 一歩進んで,バイオマス利用の核としての下水システムの位置付けで,地域全体の物質循環が考えられないか。DSPと住民サービスというだけではなく,地域全体への貢献,大きくは地球環境。
講演2) 《 北海道におけるDSP 》
北海道建設部まちづくり局都市環境課参事 武智弘明
- 道では昨年「有機系一般廃棄物利用促進調査の結果」を実施。調査の背景は,1)生ごみリサイクルへのニーズ,2)国土交通省での「ディスポーザー導入時の影響判定の考え方」公表,3)ごみステーションのカラスや散乱の問題,4)悪質業者の存在。今回の調査は「考え方」に沿った検討を実際に行ってみたらどうなるかを示したもの。
- 道の役割は,ディスポーザー(DSP)に関する正しい情報(住民の意見,意義や課題)を適切に提供していくというもの。
- 巷でのDSPについての感想は否定的。市民『川を汚す』『下水には汚いものは流さない』,行政『ごみ関係設備を投資済み』『分別を奨励している』。
- 北海道では,全国平均に比べ,一人当たりごみ排出量が大きく,リサイクル率は低い(14%)。反面,下水汚泥のリサイクル率は70%と高いため,ごみ分別よりもDSPがリサイクルに効果がある場合も。
- 調査では6箇所(5市町6地区)を対象にアンケートを実施。DSPを実際に使用したことの無い人の意見。DSPに対する期待はあるが,電気料金や故障に不安。導入意志は3割。支払い意志額は購入費3万円/台,使用量(月額):無料・〜\100・〜\300・〜\500が同程度割合。
- 行政コスト(下水道,ごみ)の試算結果は,人口やごみ処理システムなどに関する都市の状況でも異なり,コストメリットの生じる場合もデメリットとなることも。DSP普及率(50%,100%)で大差ない場合や大きく異なる場合あり。ごみ収集の方法や頻度などでも異なる。
- エネルギー量(下水道,ごみ,ユーザー)や温室効果ガスの試算では,DSP導入で概ね増加。増加は事実だが,増加率は0.05%であり極めて小さい。
- 合流改善を加味したケースとして,滞水池増設で増加負荷を対処する仮定での行政コスト試算では,今回の対象都市においては,額としては減少するもののコストメリットは存在。
- 代表的な有識者意見として,ごみ有識者『効果があれば是,個別が可能なら個別で(集合住宅はDSP)』,生活系有識者『使用方法の周知啓発が必要,環境改善に役立つのであれば支払い意思形成が形成される』
- 今回,行政コストは試算したが,社会コスト(環境被害やごみステーション等の改善便益),個人コスト(DSP導入費,利用者利便性)は加味していない。社会コスト等試算のオーソライズされた手法なし。
- 条例は普及前に制定がポイントであり,闇でDSP使用が増えないように留意すべき。
- DSPの価格。USAでは$60〜70が中心で高くても$200(ホームセンターやネット販売)。同じ機種でも日本では\50,000〜80,000と一桁違う。支払意思額(約\6,000/年)は,USAでの最高値(購入費+ユーティリティ),日本の最安値には近いが,日本の最高値はその数倍にもなる。日本でのDSP本体価格は高すぎる。
- 積極的に直投型DSPを盛り込んだ始めての条例の事例(T市)紹介。「分流地区では直投型を認め,合流地区は排水処理装置付,事業所は対象外」と姿勢を明記している。使用料を\500/月・世帯は,現在の下水道料金約\3,000を考えると妥当な水準か。市長の確認を受け,指定工事店によることとして,公平な負担を図った。条例としての完成度や位置づけ方には議論があるかもしれないが,進めたことを高く評価したい。
- 道の姿勢としては「適切な情報提供」,個人的な意見としては"触らないことを良しとするのではなく,正面から考えるべき時期に来ている"と感じている。
- 条例制定の際には,是非,道庁へご相談いただきたい。
講演3) 《 ごみ問題とDSP普及・促進策につての提案 》
法人賛助会員・日本上下水道設計(株) 田崎滋久
- ディスポーザー(DSP)普及による4つの影響の観点を述べる。1)下水処理システム,2)ごみ処理システム,3)その他汚水処理システム,4)財政。
- 下水道への影響として,DSP導入により排水負荷は確実に増加。排水設備,管渠,ポンプ場,合流式,水・汚泥処理への影響が考えられ,清掃回数の増加やレベルアップや処理費用の増大など。対応可否検討や実際の投資効果との兼ね合いもあり実情に応じて検討すべき。負荷が増えることは悪い面だけではなく,消化ガスの増加など活用面も。
- 負荷が1〜2割増加⇒処理施設にこの分の余裕があれば対応可。放流先水域にNP規制等があれば兼ねあいを要検討。汚泥増加に対しては,バイオマスの利用の可能性など,リサイクル型にしていくことを考えることも必要。
- 合流式下水道出,「分流並み」整備を行えば直投型が使えなくはないとしても,現実には整備が重大な課題。さらに,投資効果との関係にも留意。
- ごみ処理への影響としては,減量化と性状変化。ごみの水分由来はほとんど厨芥類。水分減少で発熱量は増加するが,圧縮性は低下。
- ごみの組成で検討した試算例として,厨芥類削減率0%→50%→100%において,ごみ排出量は約700→500→300g/人・日,水分が約55→45→20%,発熱量が約1,500→2,000→3,500kcal/kg。厨芥類の50%程度がDSPに投入という調査例があるが,元々DSPに入れやすい厨芥類は水分リッチが多い。ごみから水分が削減されるということは乾燥しやすい,つまりエネルギーが高くなるということを示す。
- 排出・貯留過程において,減量によって負担は軽減され,有料化の場合のコストも減少。家庭内やごみステーションでの保管性,快適性,衛生面での向上。分別労力や利便性は高まるが減量意識の低下が懸念事項。
- 収集運搬工程において,減量化の分コスト下がるが,現実の作業でもパッカー車で水をかけて圧縮させて詰めこんでおり,圧縮性の低下で若干収集コスト増える可能性もある。ただし,減量効果に比べて上げ幅は小さいを思われる(要検討)。腐敗物がなくなるので収集頻度の低減や作業面での向上。
- 中間処理工程において,減量による処理コスト低下の他,ごみの高カロリー化でサーマルリサイクルの効率化や利用選択肢も増加する。水分減少は処理の安定化が容易となり,結果としてダイオキシン対策が行いやすい効果。炉の高温化は課題であり,炉のあり方は要検討。
- 環境省でも「生ごみ等の3R・処理に関する検討会」がある。1)発生抑制,2)地域に応じた試料・堆肥化リサイクル(需要量に応じたもの),3)エネルギー利用,4)横断的事項を提示。システム全体として検討。
- ごみ処理からみたDSPは,1)水と混合することはエネルギー価値を低下する行為,厨芥類を廃棄すること(循環型ではない),という反対意見。DSPの導入を考える場合,コストや利便性だけではなく,いかにして循環型システムすべきかを考えなくてはならない。
- 未整備地区での課題として,直投型DSP使用可・不可を混在していかなければならないこと,流域や広域ごみ行政などで近隣都市や横断部局との連携やコスト負担の考え方等の調整の課題。公共サービスの公平性は確保されるべきであり,DSP対応浄化槽の利用などの利用が一つの方法。
- DSP導入が一部のみである場合,行政コストや環境や衛生面での効果は得られない。DSP事業を推進するためには,事業の統合・連携化(下水道,ごみ,浄化槽,し尿)や,民間活力の利用による全体コストの低減があるのではないか。
- 循環型システム構築のための一つの提案。事業連携と民活利用により,コスト低減,温暖化防止,循環型社会形成の効果を得ることを目的。ただし地域事情によって大きく異なるため,それぞれの状況に応じた十分な検討を行うことが重要。
- 提案事業は,1)下水道の建設・維持,2)バイオマスリサイクル事業,3)浄化槽整備事業・管理・料金徴収,4)DSP設置(リース)で構成。処理場をリサイクル事業の中核とした事業が一つの提案。地域事情等を調査して最適形態を。
- 事業スキームの提案として,全体を民活で管理することで,全体の事業効率化と普及促進。適切な提案とモニタリングを行うためにも,コンサルタントは適切なところを選定していただきたい。
- DSP設置(リース事業)についての提案として,DSPコストが課題の一つであり,大量一括購入による設置作業や管理の効率化やグリーン・サービサイジング手法を活用。整備区域外についてのDSP展開を含め,DSP+汚水処理事業の全体を統括して実施してはどうか。単に下水道だけを考えるのではなく,ごみ行政,区域外,民活による事業促進を考えることも必要ではないかという提案である。
講演4) 《 DSP機器の性能と設置のポイント 》
個人会員・荏原実業(株) 廣本真治郎
- ディスポーザー(DSP)の現状として,新築マンションの26%(2003年)にはDSP(排水処理システム)が設置されているなど,「話題」としてのDSPは浸透している。
- 昨年12月の朝日新聞に,「直投型DSP野放し(詰まりのトラブル,自治体規制バラバラ,補助金語るなど訪問販売手口の巧妙さ)」の記事。自治体に合ったルール化の必要性も記されていた。
- DSPの設置形態としては,1)排水処理システム付,2)直投型DSP,3)DSP対応型浄化槽。普及しているのは1)の排水処理システム型で,2)直投型DSPは本格的には始まっていない。特に条例等の法的ルールの元としてはこれから。
- DSP設置の主な効果としては,家庭内シンクの三角コーナー等不要,滑りや臭気,ハエ等の問題が軽減されることや,ごみステーションでのカラス等の削減,寒冷地では袋同士が凍結して破れるなどの課題も解決できるということ。
- DSP本体の機器仕様としては,当NPO会員企業間で極端な差は無く,大きさはW300弱×φ200弱×H350〜400程度,重量で5〜10kg,粉砕方式は現在では殆どハンマーミル。
- 粉砕能力をみると,1回に250gを投入として,所要約30secで99%以上が破砕。通常の家庭では1日に1回〜3回の稼働であり,電気料金や水道料を気にするほどではない。鳥骨程度を噛み込んで停止することも無く,粒度分布は5割程度が0.6mmで,ほぼ2mm以下。
- DSPの理想的な設置としての留意点。1)アース設置,2)分電器からの専用ケーブル,3)SトラップやPトラップ設置,4)漏電保護プラグの設置,5)敷地内汚水升の改修(古い家などで溜まりの部分があると腐敗懸念)などがある。
- DSP実験での1年間経過したユーザーに対してのアンケートを紹介。『生ごみが減った』『可燃ごみを出す頻度が減った』『心配事としては故障・汚水処理への影響』『100%が"便利"との感想』『DSP使用により衛生面向上』『キッチンが広く・衛生的になった』など。
- 支払意思額は使用前と1年経過後で大きくは変わらず,導入費は2万以下が21%,2〜4万円が26%でMAXでも7万円以下。利便性に対する使用料支払意思は\500/月・世帯が44%と最も多い。
- 理想的な販売形態としては,行政・住民・DSPメーカー・指定工事店の4者のタッグを組むことではないか。標準工事をどの範囲にするか,保障範囲(内容や期間)はコストにも大きく影響。PL法上の課題とも関係する。
- 販売価格や標準工事などを含めたルール化には,住民も含めて,ある程度最低基準を設ける必要があるのではないか。検討のKeyWordsは,設置基準(販売価格,アフターサービス体制,品質,安心),行政管理型(届出制度,訪問販売の撲滅,料金徴収,他),資源循環,下水道・ゴミ行政の連携。
- 最後に,農集施設の現況紹介。設計水量・負荷に対し,余裕を持った施設が比較的多く,処理水質も設計値より低い。各施設実態を見ながら直投型DSP導入の検討を行うことが適切。
《 質疑応答 》
【文責:NPO 21世紀水倶楽部ディスポーザー分科会】
会場質疑応答:特になし
注:
セミナー時間が1時間半と短いことから,十分な質疑応答時間を取ることができず,配布資料の質問事項にご記入後,事務局にご提出いただき,後日,FAX等で返信させていただくという方法を併用した。
Q.ベターリビング,下水道協会等における認証品において,処理槽なしの機械の認定品はあるのか。直投型のみで認証を受けれるのか。
A.ベターリビング(優良住宅部品)については,「ディスポーザー排水処理システム」として1件が認証を受けているものがあるが,単独(直投型)の認定品目は存在しない。日本下水道協会の「ディスポーザ排水処理システム性能基準(案) H16.3」に基づく認定は複数のシステムが認証を受けているが,ディスポーザー排水処理システムの仕様のみとなっている。
現時点では,ディスポーザー単体のみの規格や認定を取り扱ったものは無く,JIS規格が制定されるかどうかについても未定(動きはあるものの未確定)。下水道協会では,今後,直投型の仕様等を策定するかどうかを含め検討中ということである。
規格・基準や認証については,ユーザーサイドからの制定への働きかけも重要な要因となる。DSPの場合は,エンドユーザー(各家庭)だけではなく,下水道システム等も影響を受ける立場にあり,基準等が必要な項目については,自ら検討を行うほか,基準等整備の必要性の表明や働きかけも,下水道管理者の責務の一つであろう。