21Water 201005 DSP Seminar Main
NPO 21世紀水倶楽部 ディスポーザー分科会
第4回研究集会
『直投式ディスポーザーを普及させるためには何が必要か』
〜 普及を進める上での課題や対応策を考える 〜
2010年5月18日(火) 13:30〜17:30,財団法人下水道新技術推進機構 8F会議室
ディスポーザーにより粉砕した生ごみを直接下水に投入することにより,汚水処理施設における汚濁負荷は増加しますが,その負荷増量分を吸収できる施設も少なくありません。一方,汚泥のエンタルピーが上がることから消化槽では消化ガス発生量が増え,エネルギー回収を増やすことができます。また,ごみ焼却施設においては,含水率80%程度の生ごみが持込む水分が減り,発電効率がアップできるとともに,CO2排出量の削減や施設の延命化が期待できます。
今回,もう一度原点に帰って直投式ディスポーザーを普及させるための課題,ディスポーザーを導入した場合の汚濁負荷量の増加の程度等をテーマに研究集会を行いました。
開催日時:平成22年5月18日(火) 13:30〜17:30
開催場所:財団法人下水道新技術推進機構 8F会議室
主催 :特定非営利活動法人「21世紀水倶楽部」ディスポーザー分科会
参加人員:71名(講師5名,会員27名,公共団体等16名,非会員23名)
《式次第》
『開会あいさつ』
奥井英夫 (NPO法人21世紀水倶楽部監査,ディスポーザー分科会長)
講演概要
司会進行: 栗原秀人 (NPO法人21世紀水倶楽部理事,ディスポーザー分科会)
T『直投式ディスポーザーの普及の現状』
今西章夫 (日本エマソン株式会社InSinkErator事業部事業部長)
U『伊勢崎市でのディスポーザー普及の現状』
浅見頼好 (伊勢崎市 環境部環境保全課 課長)
V『ディスポーザー排水負荷量の実態調査結果と排水処理に及ぼす影響』
青井透 (群馬工業高等専門学校 環境都市工学科 教授)
W『ディスポーザー普及に向けての課題と展望』
岡城孝雄 ((財)日本環境整備教育センター 教育事業グループリーーダー)
X『ディスポーザーの規格化について』
友部秀久 (日本下水道協会 技術部 規格・検査課 課長)
全体討議
司会: 栗原秀人 (NPO法人21世紀水倶楽部理事,ディスポーザー分科会)
《 開会の挨拶 》
奥井英夫 (NPO法人21世紀水倶楽部監査,ディスポーザー分科会会長)
2005年,国における歌登の調査が終わり,市町村自ら考え方に従い直投式DSPの導入ができるという考え方が示された。この分科会では,3回研究会を開催し,主として下水道サイドに対する情報提供を行ってきた。5年程が経過するも,世の中でDSPの普及は進んでおらず,昨年は研究会を開催するのではなく,何が課題なのかを考えてきた。
今回は,下水道サイドだけではなく,ユーザーの立場,ごみとの関連,資源回収への提言などの観点でも見てみたい。
《 講演概要 》
栗原秀人 (NPO法人21世紀水倶楽部理事,ディスポーザー分科会)
講演T 《 直投式ディスポーザーの普及の現状 》
今西章夫 (日本エマソン株式会社InSinkErator事業部事業部長)
《DSPオリジナルメーカーであり,DSPの世界トップシェアのエマソン社。米国の状況や日本での現況を踏まえ,メーカーとして日ごろ思っていること,苦労している点などについての発表がなされた。》
- アジェンダ:1)DSPのポジション現状,2)自治体での直投解禁状況(解禁か?規制か?),3)販売不振?−なぜ売れない,4)市場拡大に向けて,5)下水道への影響その後
- DSPのポジション〜SWOT分析:DSPの評価(環境に良いか悪いかも),立場により変わる。
- DSP解禁の都市は増えたが,市場の動きは依然として鈍い。多くの都市では,課金や適合証明製品であることの規制がり,DSP普及の抑制力になっている。本当は普及が進んでは困るとい思っているのではとも感じる。悪質販売対策,品質・サービスへの不安,下水道への負荷といったことが根底にあるかのようである。
- 国内のDSP普及率は約3%と低い。食洗機が50年で25%位であり,これに近い位置づけと見ている。DSPは米国でも50年間で50%にすぎず,またホームセンターでの販売が中心でいわゆる家電製品扱いではない。主要家電製品のように急激に伸びる製品ではなく,時間をかけても100%普及はまずないのではないか。
- 価格:日本の要求スペックは非常に高い。ユーザーというよりディベロッパーやゼネコンの要求であるが,かなりのオーバースペックであり,価格へも反映。量産・量販体制との絶対関係にあって現状の日本の販売数で低価格化はあり得ない。ただし,ハイクラス品の標準モデルは,日本,中国,英国を含め,おおむね5〜6万円ほどで,米国が2万円弱と例外であって,特別日本だけが高価というのではない。価格が絶対的なネガティブ要因ではなく,不透明感が問題か?
- 流通:過去の悪しき流通(悪質訪問販売)のトラウマはあるが,このマーケットは衰退。指定工事店はベスト営業マンでは無く,流通階層が複雑でマージンなどで価格へも影響。受身のマーケットと認知度不足とが,"鶏と卵"状態になっている。
- 認知度が低い中で,DSP自粛自治体も多い中,行政を敵に回すような広範囲な広報戦略を行うことも難しい。
- DSPの市場拡大・開放に向けて,行政の後押しが必要。ユニバーサル商品であり,バイオガス・汚泥リサイクルの観点での推進もあり,地域経済活性化の面もある。マクロの視点でごみ減量化とエネルギー循環の双方にサポート可能な製品としてのDSPの見直しは期待できないか。生ごみ収集をごく僅かとしDSP必須の状況とすることや,バイオマス回収に有効であることからエコポイントをつけるなど。
- 行政関与で普及が進む道は無いか。極論すると,例えば札幌市では"ごみの有料化でDSPつける人が増えると困る"ということでDSP禁止条例がだされたが,逆にごみ袋が非常に高くなればDSP普及となるのではないかと思う。スラハマ市(スェーデン)ではごみ埋立が困難となり住民に3〜4つの選択肢が示され,その一つがDSPを市からリースして生ごみをごみとして出さない方法が市民のコストが最も安価に設定されている,DSPを選ぶ人が多くバイオマスが集まっていると聞く。
- また,下水道への負荷の懸念が言われるが,歌登の社会実験後,米国の一般的な処理場,スェーデンのスラハマーでも,DSPの普及が増えても,流入下水の水質は悪くなっていない(あるいは安定・良くなっている)。場合によっては,下水道管内で生物膜的な働きがあるのかもしれない。
【質疑応答】
- Q: DSPは多くの会社が参画し,撤退していった。DSPの工業会のようなものはあるのか。
- A:協会はない。生ごみシステム協会という直投型には反対で処理装置付なら可というスタンスの協会はあるが,電気工業会のようなDSP業界の集まりは無い。
- C: 工業会がないと色々難しい。行政サイドからも,CO2削減などを前面に出すことがわかりやすい。利便性を理解していない人が多いと思うが,1社では難しいし,エコポントなどの行政対応もやりにくい。
講演U 《 伊勢崎市でのディスポーザー普及の現状 》
浅見頼好 (伊勢崎市 環境部環境保全課 課長)
《3年より直投式DSP設置に係る社会時実験を実施,助成制度も創設している。社会実験の経緯や現状,課題等にいての発表がなされた。生ごみの削減及びバイオマス利用の側面でのPRも進めている。》
- 現在は環境部でごみ行政に携わっているが,その前は下水道部。
- 伊勢崎市が,群馬県の中央部,東京から100km圏内に位置。古くから養蚕が盛んな地域で,S40年毎から工業地域として発展,近年は大規模商業施設が進出。H17.1に1市2町1村の合併,H19.4に特例市。面積139km2,人口21万人。
- 中心市街地を中心に単独公共下水道,他に流域下水道,農集,コミュプラ,それ以外を合併浄化槽で整備中。
- 現在の単独公共下水道処理区域人口は51千人,処理場は発生汚泥を消化しており,バイオマス発電。グリーン電力基金による助成を適用(出力30kwhで600万円)。H21年度実績で232,000kwh/年発電し,全量を場内使用。290万円,75,650kg-CO2の削減を実現。グリーン電力証書も得ている。
- DSP導入の経過としては,H14に市長より「下水道で新しい何かできないか」から始まる。都市代謝システム研究委員会(庁内組織H15.4.1発足)を設置。
- DSP認識が低く,公民館にDSPを設置し料理教室等で使ってもらいアンケート調査。H17.3に市営住宅(50戸)に全戸DSP設置,近くの50戸程度のDSP設置無し市営住宅をあわせて実態調査し,多少はSS等が増えるものの,機能を妨げるような影響はないことが確認された。入居者アンケートでも,使いやすい,コボミステーションの清潔など好印象。
- 分流式であること,消化槽・バイオマス発電を有していること,ごみ焼却炉がフル稼働で可燃ごみ削減が必要であったことなどから,中心市街地活性化基本計画区域内で社会実験に踏み切る。H19.4に要綱制定,当初は中高層対象であったが10月より一般住宅も含め社会実験スタート。H22.4に単独公共区域に拡大。DSP設置住宅で付加価値を高め定住人口の増加,地域の活性化,生ごみのバイオマスエネルギー利用,地域環境の改善が狙い。
- 普及拡大が進まない要因の一つが価格であり助成制度(H20.1)スタート。生ごみ処理機と同様で「設置費用の半額,2万円上限」。思ったほど進んでおらず,2年間で42件の助成。助成があってもまだ高価ということ,戸建の敷地が広くDSPでなくても生ごみの処理ができる家が多いことなどがある。
- ごみ処理の現状から,家庭系厨芥ごみは289g/人・日。社会実験区域(中心市街地活性化基本計画区域)の人口8,985人全員の厨芥ごみ全量がDSPを介して下水道へ流入したとしても,SSで29mg/L(22%)増,水量として70m3/日(0.4%)増で,いずれも計画値以下。
- 下水道部門の職員の反対「管渠の閉塞・処理場の負荷の増大を問題で反対」,市民団体の反対「生ごみが目の前から消えるのは環境教育上よくない」など,反対意見もあったが,協議を重ね社会実験として進めてきた。
- H22.3の普及状況は,DSPが128基設置で対象区域の3.3%,電動式処理器(生ごみ処理機)が約2,000基設置で全市域の2.5%。
- 今後の予定として,1)生ごみと下水汚泥の混合処理→メタンガス発生量増加,2)DSP設置を促進→発電機増設,3)効率良い消化→汚泥濃縮の方法の検討など。循環型社会として普及させていく。今までは「下水道部門」中心に進めてきたが,限界がある。今後,普及に関しては,生ごみの減量対策として,またバイオマス利用を積極的にPRし,「廃棄物部門」でも行動していきたい。
【質疑応答】
- Q: DSPと生ごみ処理機は助成制度の上では同じ扱いか。市民は,どのような判断でどちらを選んでいるか。
- A: 助成制度は同じものであり,家庭からの厨芥ごみの削減を目的に「生ごみ処理機」または「DSP」に助成している。生ごみ処理機は,処理後に消えるわけではなく,各市民が何らかの対応をしなければならないのに対し,DSPでは家庭内からは消えるということで,利便性が評価されている。ただし,単独公共下水道の普及率が人口の25%でしかなく,DSPを選びたくても選べない人が多いのが現状。一方,DSP可能の区域でも,土地が広いなど,生ごみ処理機を選択する人もいる。行政から一方を決め付けるのではなく市民に選択肢がある。
- Q: ごみ収集の作業員の意見は聞かれているか。水分が少なくなるので,特に夏の作業環境が改善されていると思うが。
- A: まだDSP設置の絶対数が少ないのではっきりしない。全戸にDSP設置の市営住宅でごみステーションがきれいになっているのは確かである。なお,市では,ごみ処理のコスト比較を行いたいと思っており,単純に,収集車と管渠輸送というだけではなく,作業性も検討上の課題と考える。
- Q: DSPの有無で,ごみ収集の量はあまり変わらないと聞いている。そうなると,作業員の意見,感覚も重要な項目に含まれると思う。
- A: ごみの分別がすすみ,分別率は47%あるいはそれ以上に達しており,「可燃ごみ」は厨芥ごみと資源に含まれない紙くず位となり,"ごみ"の形態も変わってきている。水分の多い生ごみを処理するのに燃料を使って焼却しているのが課題。
- Q: 全国的にDSPに抑制的なことが多い中,伊勢崎市では第1歩が踏み出せている。1)市長さんの意向,2)ごみと下水道の両方を経験されていること,などが大きいと思うが,あるいは3)市民団体の反対が大きくなかった,ことなどもあるのか?逆に言うと,それを解決できれば他都市でも推進できるのか。
- A: トップ(市長)が積極的であったことは大きい。私だけではなく,前部長もごみと下水道の両方の経験者であった。下水だけで普及させようとしても無理だと思う。DSPのコストも抑制因子だが,地域によっては,生ごみをDSPでなくても処理できる場合もDSP普及の抑制になると思う。伊勢崎市でも,"DSPでも処理できる"として,強制の形ではなく進めていきたい。
講演V 《 ディスポーザー排水負荷量の実態調査結果と排水処理に及ぼす影響 》
青井透 (群馬工業高等専門学校 環境都市工学科 教授)
《伊勢崎市DSP社会実験を学術的な立場から支援調査。負荷変動など調査結果とその考察についての説明がなされた。さらに,利根川の水質とDSPの関連についての考察も行われている。》
- 3年前に,当時の渕上部長と出会い,DSPについての話(伊勢崎市は合併後ごみ焼却炉フル稼働でごみ削減が命題,ダイオキシン対策でも生ごみ削減はメリット大きい,高齢化に向けDSP普及はごみ回収頻度の低減の可能性など)を聞き,調査を行うことに。
- 伊勢崎市は,下水処理場の処理能力に余裕があり,マイクロガスタービン発電がある,渕上前部長及び浅見課長など下水に熟知した人材,分流であるなど条件が揃っていた。また,現業と本課あるいは環境部局と下水道部局の風通しが良い,という印象がある。伊勢崎だから直投式DSP導入が実現したと思われる。
- 利根川上流の窒素濃度は渓流水としてはかなり高い。また,上流では窒素規制がなくどこも窒素除去運転を行っていない。しかし,窒素除去を行うことは非常なメリットがある。
- 「利根川上流の水質は良好か?」⇒一般に,"人為汚濁のない渓流水中の窒素濃度は,全窒素濃度の年間平均値で大部分が0.1〜0.5mg/Lの範囲に収まる"が,実際には利根川上流の渓流水は,1mgN/L以上(NH4-N,NOx-N)が殆ど。可能性として,空からの窒素降下量(首都圏からの風)が原因ではないか。
- 図は,群馬県内外渓流水水質無機態窒素の濃度別分布と利根川の流下方向無機態窒素分布。
- 河川より下水処理水の窒素濃度を低下させて希釈する位の意気込みが必要。群馬県みなかみ町の湯宿下水処理場(OD)では,放流水無機態窒素濃度:0.49mg/L,放流先河川:0.63mg/Lの例。
- 伊勢崎市:直投型DSP設置した高層市営住宅で,DSP排水のみを他の雑排水を分離して採水できる。3回の24時間調査を実施。粘土で排水路に堰を設け全量をポンプアップする方法。
- 対象の市営住宅,50戸158人,20〜30代及び20歳未満(子供)が多い。高齢者少ない。
- DSP排水量は,午前中および夕食時に増加。季節,曜日に関係なくほぼ同じ挙動。
- 濃度は,週末と平日で異なる挙動。週末(金曜夕方〜)は,土曜 9〜13時に集中,平日は,22,9,16時に集中。食事の時間に影響されていると考えられる。季節による大きな変動は無い。
- BODが300〜500,SSが400〜1000mg/Lあり,流入下水に比べると高い。DSP(約8L/人・日)の水量なので他排水と合わせると希釈される。
- 流下の間に可溶化するという可能性。SSを1〜2hr攪拌後の溶解性TOCは約4mg/Lと低く,溶出は僅か。厨芥に含まれるもの,管渠内での滞留により増加する可能性はある。
- DSP排水原単位を試算すると,SSは多いが,窒素・リンなど栄養塩濃度は低く,BOD/N比は著しく高い。したがって,下水処理場で脱窒素を行う場合には好都合。
- まとめ,1)DSP排水量や濃度の季節変動は小さい,2)溶解性有機物による負荷は大きくなく,最初沈殿池での回収で,生物反応槽への負荷の増加や処理に及ぼす影響は小さい,3)課題としては,下水道管内でのSSからの溶出による流下中の負荷増大の検討や消化槽や生物反応槽,メタンガスの発生量への影響。
- 伊勢崎市における社会実験は,非常に注目すべき。
【質疑応答】
- C: DSP排水のみを水質調査し,解析したという点が貴重だと思う。また,東京の風が利根川のN濃度を上昇させ,窒素を除去するために,DSP導入でC/N比を上昇させるメリットがあるということで興味深い。
- Q: DSP排水の水質原単位が明確化で貴重。C/N比が高く,N除去が効率的になる可能性の知見は重要。さらに,DSP排水について,沈殿物と上澄液,あるいはSS性と溶解性という検討はなされたか。
- A: まだそこまで行っていない。今後も調査を続けたい。
講演W 《 ディスポーザー普及に向けての課題と展望 》
岡城孝雄 ((財)日本環境整備教育センター 教育事業グループリーダー)
《浄化槽においてディスポーザーを導入する可能性の調査結果や課題,今後の展望等について説明がなされた。》
1)ディスポーザーに係る動向,法規,課題
- DSP調査を行っている時期は丁寧に処理状況を見ているので処理結果がよくて当たり前。問題は,その後は誰が面倒見るのかということ。DSP導入したときに誰が責任を持つのか。特に浄化槽は個人設置。現在は市町村設置型浄化槽も増えている。DSP導入時には,その後の責任体制もしっかり。
- 農集,個人設置の浄化槽で調査。農集では多くは7割程度の流入であり,人口減少もで,DSP導入でも処理場側の負荷としてはさほど問題ない。管渠系統や家庭内の排水施設に十分な調査が必要。
- 一方,既設の小型浄化槽では困難。例えば,7人槽を5人で使用している場合などは問題ないが,5人槽を5人でとなると,空気供給の不足や汚泥の堆積(⇒清掃の頻度)の懸念。
- DSP使用の関連法規:水質汚濁防止法,下水道法,浄化槽法,建築基準法(旧第38条大臣認定,H12.6以前),排水基準,廃掃法。DSPを生ごみ回収の道具と考える点は賛成だが,ごみ行政を十分に議論すべき。例えば,回収業者など"ごみの減少"に非常に危機感を持っている。
- 浄化槽でDSPを使用する場合,システム付あるいはDS対応浄化槽は問題ないとしているが,直接,既設の浄化槽というルートじゃOKとは言っていない。DSPを導入する自治体で,管理体制を考慮の上,条例等で導入を決めているのが現状。
2)廃棄物処理からみたディスポーザー問題
- 排水量は問題とならない量だが負荷量は増えるので検討必要。また,回収した資源をどのようにリサイクルするのかという点。DSP設置後はごみ回収袋個数も減少するということも含め,最終的にどうするかを事前にしっかりと見据える。
- DSPに対する認識が非常に薄い。大きな課題。使うと楽だが,1年に1度位は配管の掃除をする時期であり,油分が多く付いている。自治体において,使用後のメンテナンス含め,当初に考えるべき。
- ごみ行政のあり方。自治体によっては分別率90%以上。収集運搬の方法,収集ごみの減量,中間処理工程への影響,などについても見て,取り組みを考える。
- 調査地域でのアンケート,利便性や室内衛生の改善が大多数。費用負担についても,初期導入・維持管理費用とも,使用前より使用後において支払い意思額が増えている。費用負担しても使いたいという現れ。使ってみてはじめて解ったという点が多くあった。
3)ディスポーザー排水処理における課題
- 標準生ごみよりも少ない量がDSPへ流入という傾向。
- 敷地内汚水枡には,泥溜のような形の場合がある。インバート的なものとつける改善を行わないとトラブルのもと。
- 農集の場合の管路内では,油分とともに,卵殻・貝殻の付着が多い。長年使う場合には,清掃などの対処を。
- 設計負荷条件は,上がるにしても特に問題にはならない。余剰汚泥量は多少増える。流入水中の沈殿物,溶解物について,歌謡化の可能性や資源化を考え,どこで,どのように取るかは課題。
4)浄化槽におけるディスポーザー排水の処理
- 約80基で調査。過去の研究会での発表と重複するので省略。
- 施設の人槽に対して実際の使用人数でグルーピング。余裕のある浄化槽では十分に使用できる。清掃時に,貝殻や油分に十分注意して行う。
- 維持管理の留意点を提案。水槽内のpH,DO,透視度を監視し,清掃(汚泥引抜)時期を考慮。通常は1回/年だが,人員比の大きいところでは2回/年(個人負担は同額)。清掃コスト結構高いため,自治体がフォローしないと維持管理に問題おきる懸念あり。
- 使用方法の指導(油脂類の流入抑制)なども。
5)今後の課題と展望
- 循環型社会にDSPをどのように位置づけられるか。細部にわたるフォローには,PFIなどの民間の活用もある。
- 行政関与:リーダーの存在・教育,住民側の十分な啓発。コミュニケーションや故障時の体制確立。
【質疑応答】
- C: 下水道でさえ受け入れたら大変なことになるのに,ましてや浄化槽で調査なんて,という非難も当事存在した。浄化槽はユニットが小さくまともに影響を受けるため,細かい調査が必要。ニーズ(DSP使用)があるのであれば,対応を考えるのが行政の役割であり,対策を考えるのが技術開発だと思う。
- Q: 既存浄化槽とDSP対応型浄化槽は,単なる容量の問題か,あるいは他の構造などの問題か。
- A: 負荷の問題。汚泥はずっと溜まっていることになるので,固形物を引き抜く必要がある。または,可溶化して後段に影響を与える可能性もある。通常の合併浄化槽に比べ,DSP対応型は3〜4割容量が大きいものとなる。特に,構造等が変わるというものではなく,通常の7人槽を,DSP対応型5人槽,と言い換えているようなイメージ。
- Q: 生ごみの運搬コストと,浄化槽で汚泥を2回/年とで,どちらがコストとして大きいかという比較はされていないか。
- A: ごみ収集は行政コストで個人は支払っていないが,浄化槽汚泥の引き抜きは"汲み取りに比べて浄化槽は贅沢費である"との観点から汚泥処理費用も個人負担のコスト。両者は性質が異なる。
- Q: ごみ回収が行政コストといっても,税金であり住民負担にはかわりない。絶対コストとしてみるべきでは無いのか。
- A: 住民は,行政コスト(ごみ)を"個人負担"とは認識していない。両者の比較は,市町村の立場で検討すべき内容だと思う。
講演W 《 ディスポーザーの規格化について 》
友部秀久 (日本下水道協会 技術部 規格・検査課 課長)
《日本下水道協会では,処理装置付ディスポーザーシステムの規格化の検討が進められている。これまでの経緯や状況についての報告がなされた。》
- 現在,協会において「DSP排水処理システムの規格化」の審議を行っている。直投型も議論にはなっているが,本日は「システムの規格化」のみの説明を行う。現在,ディスポーザ部の審議が概ね終了し,今後は"処理部"に移行していく状況。
- 経過としては,「下水道のためのディスポーザ排水処理システム基準(案)」に基づく適合評価を行う第三者評価機関について,ルールが明確ではないという課題等があり,審議を行うこととなった。なお,適合評価の前に,性能基準(案)に基づき,DSPそのものの標準化を行ったほうがいいのではということになり審議がスタート。
- 過去の経緯:H6〜8に旧建設省の総合技術開発プロジェクトの中で委員会を設置,DSP排水処理システムおよびDSP対応浄化槽の提案,またDSP排水処理システムを構成する「DSP部」,「排水配管部」,「排水処理部」に関して求められる構造および性能が提案された。
- 性能評価体制は,日本建築センターに既に設置されていた「給排水設備性能評定委員会」と「屎尿浄化槽性能評定委員会」において,自己実施による性能試験で申請に基づく大臣認定の体制(建築基準法第38条)。
- H12に第38条が廃止され,既に実用化されていたことを考慮して,下水道に接続する排水施設として適切な基準等が必要という判断の元に,協会においてH13,性能基準(案)を作成。
- 適合評価の方法は1)下水道管理者が独自のやり方で評価,2)下水道管理者が性能基準(案)により評価,3)第三者機関の適合評価書により評価,の3通りがあった。適合評価機関は4団体。
- 旧建築基準法からの主な違いは,恒温短期評価試験に関する記述を追加。なお,DSP部・排水配管部・排水処理部に関する構造と性能等の基準は削除。
- 第三者機関の適合評価による場合については,「排水処理部」は性能評価試験を実施し評価する。「ディスポーザ部」,「排水配管部」は書類審査。それまでの現場試験とはことなり,標準生ごみや擬似台所排水の規定を設けている。
- その後,技術開発動向等も踏まえ,幅広く適用できるように,H16.3に性能基準案を改訂。
- 協会と評価機関の関係は,3つめの方法(第三者機関による評価)について,評価機関のあり方と試験方法及び評価基準の統一の必要性があげられた。
- 評価機関の的確性,試験方法の細部規定化,DSP部の交換の需要などの課題から,排水処理システム規格化を整備することにより対応しようとするのが,現在審議している目的。
- H17に準備委員会,「ディスポーザ排水処理システム関連規格(案)」としてとりまとめ。"性能基準案(設置に関する基準)と規格案(製品基準)からなる。既往の適合評価製品は認証対象となるように考慮し,関連基準を抽出し,ここでの規格基準として整備。
- H21規格化委員会を設立し,本格的な審議。この委員会では技術基準のみを審議し,運用方法については,別途「下水道排水設備用品認証制度運営委員会(仮称)」で審議の予定。さらに,「性能基準(案)改訂委員会を開催予定。
- 現在,DSP部の規格案が概ねまとまり,排水処理部の審議に入るところで,年度末に暫定規格案を出したい。
- 技術基準の問題点としては,試験区分の統一,擬似台所排水の統一,維持管理方法の性能規定化がある。また,運用システムの課題として,標準外システムの取り扱い,DSP単体使用可能区域と禁止区域の設置区分,固体管理方法,第三者機関の要件,など。
【質疑応答】
- C: そもそも,建築部局が作成したものを受け継ぐという受身(やりたかった訳ではなく)で,下水道が受け入れることになる処理システム部分について規格化されているものにもかかわらず,直投式DSPを解禁した自治体は本体部分について条件としているのが現状。本体部分についてもみることになったというイメージ。システムとしてのDSP本体規格ではあるが,単体としても運用あるいは適用できるのではないかと思う。
- Q: DSPシステム規格化として,その案が出来たとして試験を行うのは協会か。DSP協会が存在しない中で,基準をつくる協会としては,どのあたりの機関を念頭に置いているのか。評価機関についてはどのように定まるか。その第三者機関の査定(適切などうか)を見張るような認証機関が存在するという構造なのか。
- A: 現在は規格化についての審議中。今の質問は,認証制度についての話になり,今後の審議テーマで,今年度末位からスタートの予定。第三者の評価機関で評価を行う形になると思うが,その"評価機関の評価"ということを認証制度の中で規定する形になるかと思われる。評価機関の登録要件を審議することと,制度を決めるということとは別で,認証制度を審議する委員会とは別に「登録規格検査機関の要件」を設けるということ。規格適合評価ができる機関かどうか(試験設備の所有や判断が出来るかどうか)の規定を設ける。現状での大きな課題として,どのように査定するかというルールはっきりしていないということがあり,ルールを決めようというのが経緯である。なお,現況における評価機関がどこかというのは現案の中でも紹介している。
- C: 認証の基準を協会が作り,実際には4機関が実務を行っているというもの。今後は,処理性能だけではないという面もあり,より公正な認証のしくみが必要であるし,これからの議論となるのだろう。
《 総合討議 》
【討議司会: 栗原秀人 (NPO法人21世紀水倶楽部理事,ディスポーザー分科会】
《冒頭,司会により論点整理がなされた後質疑応答と論議に入った。主な内容は次のとおり。》
【論点の整理】
「普及を推進させるためには何が必要か」の観点で,3点を整理した。
- "使ってみたらよかった"と認知される。また,単なる利便施設としてではなく,資源循環施設として,市民に,あるいは行政にどう認知してもらうか
- どのように合意形成していくか,首長を含め行政の積極性が必要
- 販売やアフターケアに過去のトラウマ,価格が高いというだけではなく不透明性や量産との関連も大きい
【質疑応答・論議】(質疑:Q,回答:A,コメント:C と記す)
- Q: 単体DSP推進の方向を期待する意味では最後の発表で少々がっかりした気持ちになった。条件を確認する意味でお聞きしたい。単体の設置可能/禁止区域を運用の中で,というお話だったが,具体的にどのように住み分けるのか。話せる範囲でご回答いただけないか。
- A(友部氏): 現在,規格化の委員会を行っており,システムとしてのDSPを規格化しようとしており,製品にはシステムのDSPとして表示される。単体使用の場合も概ね同じであろうと聞いているが,規格としては単体の場合「規格外」扱い。ただ,"単体を使用してもよい"という自治体との了承の元で,運用していけると考えている。
- Q: 行政的な判断と,技術的なこと,また市場のマーケットという点があるが,技術的には今日の発表でも大きな問題はないというある程度のコンセンサスが得られると思う。その品質や認証の話と,使用可能区域か禁止かを区分することは論点が違うと思うが。
- A(友部氏): 論点が違うというのはその通り。言いたいのは,あくまでも自治体の意思次第ということ。自治体で「単体OK,単体として使っていい」となれば,それについての運用の中で扱うようにするという意味。ただ,確定ではないのでご留意いただきたい。
- C: その意味ならば解る。管材などと同様に,ある程度の品質は確保しなければならない,そのためのバックは必要。ただ,先ほどの話では,単体についてのマイナス思考のように感じたので確認させていただいた。
- Q: マーケットの伸び悩みについて,食洗機は建売住宅などでのビルトインによる販売で伸びた。セットだとコストも安くなる。DSPもビルトインでないと難しいと感じた。
- A(今西氏): そう思う。食洗機では,価格が1/3程度のものが出てが,実際には価格は高くともしっかりしたものが普及している。リフォームなど大きなコストを掛けるときに含めるのがいいかとも思っている。
- C(栗原氏): ビルトインについて,マンションなどにおいて処理装置付DSPとなると処理装置が価格を押し上げている。そのコストでDSPつけるかどうかがスクリーニングされている。処理装置付であることが足かせになっているという話を一部で聞いている。
- Q: 自治体において,直投式DSP導入のやる/やらないは,分流/合流の区分に尽きると思う。DSPの固体監理をIDで行うのであれば,光ファイバーでIT制御行って,降雨時(管渠の流量増加時)にはDSPが使えないようにする,あるいは不正なDSPを管理できる,という発展的なことにもならないか。
- C(栗原氏): 各自治体は,H35までに合流改善を行い分流並とする行動計画を立てることになっている。流出負荷のシミュレーションでは,直投式DSPが100%普及と仮定した場合でも,現況(合流改善前)よりはるかに負荷が小さいし,"分流並み"の目標を達成できる。個人的には,合流だからという理由で立ち止まる必要は無いであろう(きちんと合流改善実施すれば)。極論すると,降雨時にはトイレを使わないようにという方が先に来るはずだが議論になっていない。
- C: 20数年前にコンポストを検討した時,下水汚泥中に栄養が足りないのでDSPを,という話題が出た。汚泥処理がうまくいっていれば,資源の循環の中にDSPが位置づけられる。DSP規格化と同時に,"資源のみち""循環のみち"の中にDSPを組み込めないか。その資源をどう再生するか,ごみとしての回収・利用コストと下水で回収するコストとの比較の話があればわかりやすい。
- C: 世の中は,いいものと解っていても普及しない場合があるのはよくある。合流の問題では,合流の区域はシステム付でというのも解るし,合流改善をしっかり実施すればという話も理解できる。その根拠をしっかりと理解していればいいと思う。単体も「OK」と決め付けるとして,"行政が動かない"ということは特に驚かない(行政は新しい事を始めないものなので)。しかし,市民のニーズが少ないということが不本意であること,バイオマス利用といいながら実際には消化槽は増えていないということを,もっと議論すべき。極論すると,世の中を動かしているのはマスコミと議会。役所は議会により動くし,議会は市民の意向で動く,その市民はマスコミに踊らされる。さらに極論すると,利益を得たいと思う人がマスコミを動かすろ,市民が乗せられて,議会/役所を動かすことになる,というシナリオが書けるのではないか。
- Q: SWOT分析が興味深い。DSPもいいことばかりではないという点はあると思う。推進するにはという議論の中で,DSPとコンポスト処理機はある意味で競合品。伊勢崎市では,コンポスト処理機も助成金の対象であるが,両方を対象とする時にどちらが増えているのか。
- A(浅見氏): 今は増えているのはDSP。今は下水道処理区域が狭いので数的にはDSPが少ない。下水処理区域内ではDSPを増やす方向性。
- C(栗原氏): 黒部市の例では,下水道区域において「DSPと生ごみ処理機のどちらかを選んでください。どちらでも助成します。そうやって,収集・焼却ごみを削減していきます。」という施策(H22.4〜)。解は一つでなくてもよいというストーリーになっている。
- Q: 下水部門の職員の反対と市民団体の反対があると思う。下水サイドに対しては,ある程度技術的な回答ができると思う。市民の場合,観念的な理由であることも多い。どのように納得していただいたのか,参考に伺いたい。
- A(浅見氏): 下水サイドの反対は,管渠の閉塞と処理場の機能。実際に処理場に行ったことの無い人の意見であり,現場に長くいた立場から説明。管渠の閉塞問題も時々生じるのはたしかだが,原因は「油」であって,DSPの粉砕ごみではないと説明した。環境団体は,目の前からごみがなくなることは意識低下になるという反対。汲取便所の場合が"目の前に残っている"という状態とすれば水洗便所はどう考えるのかと説明すると,なるほどと納得いただけた。
- C(渕上氏・伊勢崎市前環境部長): 反対意見は,現場に言ったことが無い人が言う。下水菅に潜り,マンホールポンプを分解してきた自分達が言うこととは重みが違う。自信を持って反論できる。下水先進地が合流式で「下水道では絶対にダメ」という認識がこびりついている。ごみが環境部局,し尿が下水部局の扱いが多いが,ごみもし尿も法的には一般廃棄物。一つの部局・一人の責任者の判断で行うほうが早い。何人もの人間が関係すると進まないし,国も同じ。同じし尿や生ごみなのに,収集すると環境部局,下水に流下すると下水道部局とするのではなく,全体として,特にCO2削減の観点で判断すべき問題。の問題で最後に,下水はし尿を処理しているのであって,多少生ごみが入ってきたからと恐れることは無い。
- C(栗原氏): 一つの示唆になる。伊勢崎だけではなく,黒部市も滝川市も,組織が比較的小さい中で。例えば,東京都の下水道局と環境局では,話をまとめるのは難しいだろう。
【※】最後に,前に進むための提案を一言づつ。
- [今西氏] メーカーの立場,「売っていくら」では走りながら考えることも行う。行政は,石橋をたたいて渡らないことも多い。渡ってから判断することもある。USAでもDSPを積極的に活用している都市は合流式。しかし,現実はDSPで何もおきておらず,生ごみよりも洪水やハリケーン対策などの方が問題であるというのが実態。
- [友部氏] 協会は単体を拒否しているのではなく,現在はシステムの方の標準化/規格化を審議しているのであり,時期が来れば単体。先進地では,設置を間違われると困るから,という理由で標準化を止められているというのが現実。
- [岡城氏] モデル的にある都市で,見てもらう・知ってもらうキャンペーンを行い,マスコミを含め周知してもらいたい。知らない人が多すぎというのが実態。
- [青井氏] 一生懸命されていても普及できないというのが現実。普及させるためにも,国は任せる部分は任せることも大事。例えば,モデル市においては助成金5割のための補助を出し,その成果を吸い上げて他都市に応用するなど。かつて,類似の技術を使っているし尿と下水であるが,し尿はマイナーだったので民間任せ,下水は影響が大きいからと行政で指導。結果,下水では進まなかった技術も沢山ある。
- [浅見氏] 下水だけではだめで,環境からのアプローチも必要ということが解った。環境部での扱いの中で,太陽光発電の補助は人気があるが,DSPはなかなか浸透しない。TVでソーラーパネルは出てくるけどDSPは出てこない。どちらも温暖化対策になる。DSPのよさとともに,温暖化対策にもなるということを全面に出しPRすることも大事。