21Water 2005 IT Seminar
21世紀水倶楽部 ITグループセミナー「IT先端技術の活用法」(2005)
講演『IT先端技術の活用法』 3.既存ソリューション及び実証実験
NTTインフラネット(株) 事業開発本部: 永井 友康 氏
《IPフォン》
- IPフォンとは,「電話のフリしたデータ通信」。IPパケットを使って,音のデータ(正確には,音声と似たデータ)にアドレス(メールアドレスのようなもの)を付け,目的の電話機に届けるもの。
- 電話とデータ通信を同じ回線で行うため,従来の「電話料金」を大幅に削減できる。
- IPフォンに必要な設備は,基本的には,企業でも個人家屋でも同じであり,基本的には,VoIPアダプター,SIPサーバ,ブロードバンドルーターが必要。
- VoIPアダプターは,アナログ音声をデジタルデータ化,あるいはその逆を行うもの。
- SIPサーバは,データ通信先(通話先)を管理し,ネットワークに多数繋がっているIPフォンのVoIPアダプターの「どのアダプターに繋ぐか」を制御するもの。繋ぐところまでがSIPサーバで,一旦繋がった後は,VoIP同士の1:1で通信(通話)。終わったらSIPサーバで切る,という形。従来の電話は,交換器(電話会社サイド)が繋ぎ,通話中もずっと交換器が繋がったまま。
- このようなシステムのため,IPフォンでは逆探知が非常に難しい(現状ではできない),という課題がある(緊急電話や警察の捜査の場合に問題)。
- IPフォンのサービス形態や,そのシステム構築には様々なパターンがある。最近では,VoIP専用の電話機などもあり,カテゴリ分けや定義は困難。
- 以前(5年ほど前)のIPフォンではトラブルも多く,接続が集中するとサーバ容量が不足し,「よく切れる」という事もあった。そのため「重要な電話は携帯で」「IPフォンを導入してもふつうの電話もはずすな」などの本末転倒となることも。現在のサービスでは殆ど問題ない。
- 課題としては,IPフォンで相手に繋がらないとき,原因が,電話機本体なのか,VoIPなのか,ルーターなのか解りにくい点がある。システムをある程度理解していないと,どこを確認していいのかがわからないらしく,「とにかく,窓口の空いているところに苦情の電話をかけた」というユーザーも多い。
《IPタグ・IPカード》
- ICタグ,ICカード,RFIDに大別。ICタグの電池のあるなしによるアクティブ型・パッシブ型や,ICカードの接触型・非接触型等のタイプもある。非接触型(電波のやりとりがある)ICカードの例としては,SuicaやEdyカード。
- ICタグとICカードの区別としては,主として記憶容量の差。ICタグは,殆ど128b程度で,"識別コードのみ"が基本で,データベース等が別に存在し,そのものが「何」であり「どこ」に属するかを判別する。ICカードは,"チップ"が埋め込まれているもので,ある程度のデータ量(32kb,64kbなど)がある。
- 一般的には,データの書き換えまで可能なのはICカードだが,ICタグでも書き換え可能なものもあり,区分は非常に微妙。
- ICタグソルーションに必要なものは,ユーザーが所持する「ICタグ」,情報(識別コード)を読み取る「ICタグリーダー」,これをネットワーク(専用線やインターネット)で接続できる「データベース」となる,これを,管理者が閲覧したり,サーバを利用してユーザーにメール転送したりする。
活用例1:迷子検索システム(デンデンマークの遊園地で採用)
- 希望する家族の子供に腕時計型のICタグを装着し,親には遊園地内をメッシュに区切った地図(縦横に番号)を渡す。3箇所の受信アンテナで,当該ICタグを確認し,3点への受信時間差で位置を特定(誤差3m程度)し,親の携帯にテキスト分でメール。
- 日本などで用いられている位置特定方法は,電波の強弱で判断しているため,壁などの電波を妨害する障害物がある場合,誤差が大きくなる。
- サービス費用は\1,000程度で,親としては「子供が迷子になる心理的負担を軽減」。園側は「迷子探索に要するコスト軽減(迷子1人あたり約1時間)」のメリットがある。同時に,通知テキスト分にコマーシャルも挿入。
活用例2:図書自動貸し出しシステム
- 蔵書の裏表紙などにICタグを貼り付け,自動貸出機による貸出を実現。
- ユーザーのメリットとして,あまり人に知られたくない図書(病気関係など)が心理的負担無く借り出せること,子供などは「手続きが面白い」というゲーム感覚で本を借りる効果(結果として本に親しむ機会)などがある。
- 現状では,タグの費用(印刷などを含む)が100〜150円/枚と,コスト的に厳しい。また,タグ(シール)の大きさが8〜10cm四方と,文庫本など小型の図書に付けられると「かなり大きい」というイメージ。
活用例3:エコポイント社会実験
- 名古屋市で,公共交通機関の利用を促進するために行われた社会実験。モニター(応募制)に「エコポンICカード(実際はICタグ)」を配布し,公共交通機に乗降の際に,駅などに再設置してあるリーダーにかざすことでポイントがたまる。オインポイントによって,特典(バスカードなど)と,公共交通機関を利用することによる社会貢献度(CO2削減量)の通知。
- HPでも案内(EcpPon2004)。好評のうちに実験終了。
活用例4:自律的移動支援プロジェクト推進委員会
- 全ての人が持てる力を発揮して支えあうユニバーサル社会の実現に向けた取り組みとして,社会参画や移動に必要な「移動経路」「交通手段」「目的地」などの情報について,「いつでもどこでもだれでも」入手できるシステムつくり。国土交通省の委員会として,神戸市で社会実験。
- HPでも案内(自律移動支援プロジェクト推進委員会)。
活用例5:ICタグの物流への適用
- 現在は,タグコスト(現在は,シール状のもので数十円から)がネックになっている。今後,ICタグ価格を2〜3円まで下げることが目安。
- まずは,国際便からICタグ利用の動き。