21Water 2005 IT Seminar
21世紀水倶楽部 ITグループセミナー「IT先端技術の活用法」(2005)
ディスカッション:下水道光ファイバー
(フリートーク形式)
- 下水道界では,一時期,光ファイバーの促進が言われていたが,さほど普及しなかった。無線LANなども出てきているし,競争力がないのだろうか。
- 光ファイバーは,媒体としては非常に優秀なものなので,今後も廃れるものではなく,使い分け・切り分けがなされるのではないか。例えば,画像は光ファイバー向きであろう。特に,自前で媒体(光ファイバー)を保有しているのであれば,メディアコンバータを使って,他の媒体との共有もできる。
- 「どのように使うか」と「どんなコンテンツを送るか」によって,必要十分な媒体は異なる。ネットサーフィンやメールやり取り程度なら,ADSLで十分だが,フレッツフォンになってくるとADSLではつらい(光ファイバー程度の媒体が欲しい)。
- どっちが本命なのだろうか。
- 現状では,シェアはまだまだADSLであるが,光ファイバーの伸び率は大きい。現在の料金体系は,「通信速度が速いけれど高い」であり,"早い"ことが目的になれば,光ファイバーの需要となる。
- 室内配線がネックになる場合もある。道路までは線があっても,そこから室内へは,壁に穴を開ける工事が必要になったりする。家庭内のコンセントが使える電力線通信は興味深い。
- BフレッツとASDLの媒体は,単純に通信速度だけの違いではなく,データの上り・下りの振り分けも違う。ADSLはデータを400kHzに区切り,下り(ダウンロード)を優先に振り分けているが,Bフレッツはそのような振り分けを行っていない。データの上り・下りの片方のみを優先して使う使い方が想定。
- 下水道管渠敷設の光ファイバーの線貸しが注目を浴びたときもあったが,なぜ普及しなかったのだろうか。
- 一番の要因は「ルートが合わない」点。下水管は放射状に敷設されているが,通信ルートは網の目状にしたい。局部的(河川の横断,埋設の多い大規模道路の部分的なルートなど)は使われている。もともと,通信事業者の方で「必要なところ」には既に設置済であり,下水道管渠内の空間を借りるまでも無い。逆に,下水道事業者も,自前で敷設せず,既存の通信事業者のルートを使ったほうがコスト的に安いことも多い。
- 下水道管渠を利用すると,各家庭まで既に繋がっているのでいいのではないかという話もあったが。
- 通信事業で行うほうが,下水の場合よりも浅い埋設で可能なので,下水管敷設ほどのコストはかからないし,調整などを含めての工事がしやすい。下水道管渠空間を使って工事しても,設置したと思ったら建物が改築され,同じ場所の掘り返しにはある程度の期間経過しないといけないなどの制約で撤去工事ができないなど,タイミングの問題や調整の煩雑さもある。
- 通信事業でも,1980年代より中継地間では光ファイバーを使用しており,毎年,更新事業も行われている。下水道管渠敷設の場合,更新事業が行いにくい(深い,工事も単独より煩雑,調整必要など)のもデメリットの一つ。更新の理由は,容量的なものが殆どであるが,全く劣化しないというものではなく,今後の新開発への更新もありえるし,(設置する側としては)更新工事のことも考えなければならない。
- Bフレッツが将来的にも計画されていない地域(採算性がとれないと判断されている地域)はある。そのような地域の多くは,下水道も未整備。ルートの問題が一致すれば,事前の計画調整がうまくなされるという前提で,可能性はあると思う。
- 下水道で自前で使用する場合においても,下水道に特徴的な課題があり,自然流下のために,非常に深くなるルートがあるが,ルートを短絡したいときもあるが,補助事業では,光ファイバーだけを違うルートにはできない。財政が豊かな自治体では単費でも短絡ルートで敷設することもあるが,多くは「だったら,既存の通信事業者を使う」となっているようだ。
- ある自治体内で,行政区域内に光ファイバー完全整備,という事業があり,道路,河川,通信,下水などが考えられていた。結果的に,そこでは縦割り行政の弊害もあり,下水道光ファイバーの採用に至らなかった。
- 下水道光ファイバーだけで,というのでは普及しない。他事業(河川,道路,電気,ガスなど)とも連携しなければ。
- 下水道管の直線性を利用できないか。人孔毎に無線LANを設置して,通信網を張り巡らせるというのは可能か。
- 「媒体は光ファイバーでなければならない」という意味はないと思う。ただし,無線LANでは,コストや安定性,通信速度に問題がある。
- 下水道は,各家庭まで枝管が行っているのでFTTH(Fiber To The Home)が可能というのが売り文句だったが。
- 下水道で行っても,敷地内にある取り付け菅の枡までで通信媒体は地上に立ちあげる。キッチンやトイレから通信線が出てくるのではない。結局,壁のどこかに穴を開けるとか,エアコンの排気用の穴から家屋内に引き込むと,下水道管だから簡単にできるというのではない。どの方法であっても,敷地内はユーザー負担として,強度は必要ないので,地上を這わせても問題なく,各家庭としては,下水道管でという特典はあまりなかったようだ。
- 「全ての道路に下水道管(空間)がある」ということをメリットとして,下水道光ファイバーも普及するのではないか。
- 全ての道路に光ファイバーを入れること自体が,メリットになるのであろうか。
- 下水道光ファイバーは,ファイバーチューブが通常より高いものであるし,施工(敷設工事)も高い。競争は厳しい。
- コストだけの話ではなく,景観問題の解決ではないのか。市街地はともかく,ちょっと郊外になると,見苦しいほどに空中に線がある。
- 通信事業の回線も,かなり地中化が進んでいる。空中線が多くなっているのは,有線放送であることが多い。コストだけではなく,ユーザーの注文があればスグに工事,となることも地中化していない原因か。
- 「管の中にケーブルを入れること」が目的であってはならない。IT技術で何がしたいか,である。