2004シンポジウム「下水道と家庭用品を考える」講演概要質疑討論−2
                                
U 会場からの質問

(8) 生活の中で,便利さや清潔さに向かっていくのは仕方ない気もするが,例えば,シャワートイレは,10年前はさほど見られなかったものの現在の日本ではかなり普及しているようだ。これは,日本で開発されたものか,また世界的に広まるようなものか。環境負荷の観点で見ると,電気を使うものの,紙の使用量は減ると思うのだが,トータルではどうだろうか。

(井須)
・「シャワートイレ」はINAXの商標名であり,他社では別の名前。品名としては「温水洗浄便器」。
・元々の開発の経由は「寝たきり患者用」に洗浄乾燥機能をつけた全自動トイレとして,スイス(クロソマット社)で開発。日本ではINAXが最初に導入した。
・日本では,エアコンに迫る勢いで家庭に普及し,50%以上。ここまで普及しているのは日本だけ。ただし,日本で快適さを知った外国人は,帰国後も使いたがっている。口で言ってもなかなか良さが実感できないもののようだ。
・水使用量は,普通は1回500cc〜1リットルでありさほどの量ではない。トイレットペーパーの基本はセルロースであるので,汚泥量を減らすのに効果があると思う。
・環境負荷としては,電気が大きい。最近では,家庭内の電力使用量のtop6になっており,エアコン,TV,冷蔵庫などと同列の家電製品のイメージになってきている。
・最も大きいのがヒーター部分。最新型では自動開閉による節電や,温水タンクを使わない瞬間湯沸かし器タイプも開発。
(服部)
・最初に存在を知ったのは,遠藤周作の「大変だァ」という短編で,高温でやけどしたという内容。必要があるのかと思った。
・現在は,私自身の家でも使っている。紙の使用量が減ったかどうかは,実感はない。乾くまで待つのが面倒で使っているので減らないのではないか。
・痔や快適性だけの問題ではなく,女性の膀胱炎が大きく減少したということを医者から聞いた。そのため,横浜のランドマークタワー13階の女性フォーラム「横浜女性協会」のある階だけには,特に設置してもらった,という経緯もある。
・今後も,やはり,増えていくだろうと思う。

(9) 最近の水道使用量は横ばいで,使用量の減少のコメントもあったが,社会的教育やPR,単価アップなどの対応を行ってでも,やはり基本は減らす方向であろう。自動水栓に,発電機能がついているのはすばらしい。温水が来るまでの流しっぱなしなど勿体ない。公共ではコスト高であっても自動水栓の導入が」あるが,個人ではコストが高いのでなかなか踏み込めない。量産すればコストは下がると思うがどうなのか。また,全部を自動水栓にすると水量はどれくらい減らせるか。

(井須)
・今までは,パブリック向けを中心の開発で,オフィスビルなど新築パブリックにおいてはかなり高い割合で採用頂いている。。
・京都議定書を考えると,相当節約しないと96年比6%は達成できないということで,民生(家庭の中)での事を考え,今年4月から家庭向け商品も発売体制にした。
・従来は,数が少なかったので部品を外注生産していたが,製品コスト削減やコンパクト化などの技術開発を行っているので,これからは民生用として普及していくと思う。
・家庭内での水量試算はないが,パブリックでは3割減の試算がある。使う場所でかなり異なり,家族全員が使う洗面台がもっとも効果が大きい。
・捨て水問題の解消として,一部の商品では,小さな熱源をつけて"捨て水レス"の即湯システムを実現し、浴槽や洗面台などへ搭載している。多少エネルギーが必要であるが,捨て水によるロスより遙かに小さい。


V 閉会挨拶                    
21世紀水倶楽部理事亀田泰武
・今までの下水道事業は「作れ作れ」で作らされている感じで,あまり外に目を向けて来なかった。
・従来,下水道管理者は普及が中心課題で,下水道の上流・下流をみると,処理水の生態系への影響を考えるなど排出側はそれなりに見るようになってきているものの,流入側については殆ど意識していない。
 一方でユーザーは環境に対して非常に意識されるようになってきており,今後,下水道管理者が利用者とともに,よりよい環境を目指して積極的な活動を行っていく必要があると考える。
・本日、講師の方々におかれては貴重なお話をいただき感謝いたします。