講演 「東日本大震災における下水道の被害と対応」 2011.5.25 国土交通省下水道事業課 石井 宏幸 企画専門官 |
まず事態は現在進行形であり、中途の部分もあるがご容赦願いたい。 今回の地震の概要はM9.0世界の有史上四位であり、その後の余震は400回以上で、誘発地震である3月12日の長野県北部地震(M6.7)および3月15日の静岡東部地震(M6.4)による被害を合わせ国土交通省では東日本大震災という。 1. 被害状況 <管渠>:管渠の状況は二つの傾向に分かれ、宮城・福島周辺では下水管の埋戻し部が液状化し、茨城・千葉の関東では埋戻し部以外も含めた全面的な液状化被害が発生している。今回最大震度7を観測した宮城県栗原市では、平成20年の岩手・宮城沖地震で被災し復旧した部分では今回被害が無く、その他の所で被害が発生している。埋戻し時に現行の基準で締固め、砕石による埋戻し又はセメント固化が実施された部分は液状化に対応できたと考えている。 関東の千葉(浦安、習志野など)、霞ヶ浦周辺の沼、川の埋立部などは埋戻し部以外の全面で液状化が起こり、マンホールの浮上や管内への土砂流入などが生じた。 県毎の被害状況は、135市町村、延べ66,000qのうち目視レベルの調査で946qで被害が出ており、被害率は約1.4%(中越地震では約4%)であった。現在はTVカメラでの 状況調査に入っている。 <処理場等>:処理場の被害状況は、仙台市南蒲生処理場が約40万m3(70万人処理)で最大の被害となっている。 被害状況は震災当初120か所が被災したが、5月18日時点の状況は以下となる。 (3/16 時点) (5/18時点) 稼働停止 48か所 19か所 (応急対応10、別位置4、準備2、無流入2) 一部停止 63か所 0か所 不明(原発周辺) 9か所 9か所 ほぼ正常 0か所 92か所 計 120か所 120か所 応急対応中の中で、特に数日で早い対応を取った南蒲生と県南では、管理者である仙台市と宮城県がBCP (業務継続計画)を策定していた。陸前高田は民有地を借りユニット型の膜処理システムを設置している。また、別位置での対応を準備中の気仙沼処理場は地盤沈下が大である。福島県北泉、石巻市雄勝は対象全家屋が被災で流入がない。 雨水ポンプ場は、23か所で総稼働停止中(7か所は対象地域なし)であるが、梅雨までには対応完了予定である。 2. 対応につて <支援状況>:3月13日には国交省下水道部内に下水道支援調整チーム(下水道部と関連部局)と現地支援本部(東北地整と関東地整)を立ち上げ、5月13日までに延べ6390名の調査協力・支援を頂き、関係各位にはこの場を借り感謝申し上げる。 <委員会の設置>:4月12日に「下水道地震・津波対策技術検討委員会」を設置し9月を目途に応急復旧と本復旧のあり方を取り纏めることとし、濱田教授を委員長に4月15日には緊急提言を発表していただき、被災自治体への周知をした。 技術的緊急提言は概略 @ 初期(緊急) :市街地に汚水を溢れさせない <実施済み> A 現在(応急) :公衆衛生、浸水被害対策 <対応中 > B 今後(本復旧) :機能回復、再度災害対策 である。 3. その他対応 ●・補正予算は災害復旧等に伴う公共土木施設等で7,751億円が成立している。 ●・災害復旧への手続きの簡素化について、以下の内容ですでに通知されている。 @ 管渠調査の簡素化 (TVカメラ調査のスパン簡素化) A 机上査定の簡素化 (300万円未満から5,000万円未満へ引上げ) B 持帰り限度額の変更(1か所4億円以上から30億円以上に引上げ) *工期や、諸状況により管渠、施設とも分割できる ●・課長補佐事務連絡にて、 @ 省エネルギーなど適切な設備を積極的に進める。 A 外部エネルギーの依存率を下げるため、汚泥のエネルギー利用を検討する。旨を周知。災害復旧事業は原形復旧が基本であるが、より良い復旧となるよう、できるかぎり柔軟に対応したい。 以上、現状の報告とする。 以上 <講演にて使用された資料・データは集会報告の石井様説明資料をご参照ください> |