管路部会グループセミナー報告    
「これからの下水道管路、管理運営に求められるもの」  2017/1/27
                  NPO21世紀水倶楽部
      
【開催主旨
 昨今、地方自治体の財政難や下水道整備の高普及化、下水道法の改正などに伴い、下水道に求められる役割などが大きく変わりつつあり、下水道管路についてもさまざまな課題が浮上してきた。特に台風を含む局地的集中豪雨の頻発、大規模地震・津波の危険性の高まり、下水道管路の老朽化は早急な対応が求められているところである。
 そこで、21世紀水倶楽部管路部会では、下水道管路に関わる課題を整理し、具体的に何が課題であり、その課題を解決するためにはどのような努力が必要となるのかなどを議論する目的でグループセミナー(勉強会)を開催した。
 国土交通省下水道部をはじめ、浸水対策や不明水対策、管路調査に関わる関係者を招き、各20分ずつの講演をしていただき、それを踏まえて全体討議を行った。参加対象は勉強会として開催したため正会員、賛助会員に限定したが、参加者数は45名に及んだ。

講演】

○内水浸水対策に関するガイドライン類『七つ星』について        
     国土交通省下水道部流域管理官付課長補佐・斎野秀幸氏
 国土交通省が平成28年4月に公表した、内水浸水対策の道しるべとなるガイドライン類、いわゆる「七つ星」(雨水管理総合計画策定ガイドライン(案)、官民連携した浸水対策の手引き(案)、下水道浸水被害軽減総合計画策定マニュアル(案)、水位周知下水道制度に係る技術資料(案)、内水浸水想定区域図作成マニュアル(案)、下水道管きょ等における水位等観測を推進するための手引き(案)、水害ハザードマップ作成の手引き(案))について、最新情報を交えて説明。
○水位主義雨水事業のこれから
   新たな雨水管理計画策定手法に関する調査検討会事務局・服部貴彦氏
 新たな雨水管理計画策定手法に関する調査検討会は、平成27年度に、新たな雨水管理の考え方を水平展開する目的で、国土交通省に設置した、東京大学大学院の古米弘明教授を委員長とする検討会であるが、講演では水位主義による浸水対策マネジメントについてⅠ.水位主義の経緯、Ⅱ.雨水管理は粘り強いリスクコミュニケーション、Ⅲ.水位主義は新たな日本の水モデルの要である、を論点として紹介した。なお、講師は㈱日水コン下水道事業部ビジネス・イノベーション部長で、水のポテンシャルを活かした地域イノベーション等市場開拓を進めている。


全体討議のもよう(正面左から永田氏、後藤氏、有井氏、コーディネーター・押領司氏、斎野氏、服部氏)

○不明水問題について─コンサルタントの立場から  
     不明水研究会会員・永田壽也氏
 講師は、㈱日水コン下水道事業部担当部長で、(一社)全国上下水道コンサルタント協会の「下水道管路内流量・水質調査技術専門委員会」の委員として、「下水道管路内流量・水質調査マニュアル」の作成・執筆に参画。不明水研究会は、この委員会の有志により構成された研究会で、新技術を活用した調査のあり方等を研究し、効率的な不明水対策に資する目的で、平成15年12月に設立され、精力的に不明水対策に取り組んでいる。講演では、同研究会の取組みなどについて発表。
○不明水問題─調査会社の立場から─    
     不明水研究会会員・後藤淸氏
 同じく不明水研究会の会員で、下水の不明水調査を中心としたフィールド調査会社、ペンタフ㈱CEOである講師は、1.不明水調査の現場から、2.問題解決への取り組み、3.建設からアセットマネジメントの時代へ、4.機能診断のかなめ、水位スクリーニング、の構成で講演したが、水位スクリーニングについては、費用的にスクリーニングに対応できなかった従来の水位計や流量計の問題を解決する「圧力チップを使った水位スクリーニング」の詳細情報を説明。
○管路施設調査最新技術─3D化画像によるデータベースの構築と活用            
  ー自治体のデータベース構築と管理負担を軽減できるシステムー
     管路情報活用有限責任事業組合・有井良一氏
 21世紀水倶楽部において広報・普及活動に取り組む管路情報活用有限責任事業組合は、平成25年、人孔内固定TVカメラ調査システム等について(公財)日本下水道新技術機構の建設技術審査証明を取得し、団塊世代の熟練技術者の退職により途絶えてしまう恐れのある技術・ノウハウを融合し継承する目的で発足。平成28年度には国土交通大臣賞「循環のみち賞」やGKP広報大賞「審査員特別賞」を受賞。講演では、それらの技術を解説するとともに、それらの技術を駆使した「自治体のデータベース構築と管理負担を軽減できるシステム」を提案。

全体討議】 
 全体討議では、当倶楽部理事の押領司重昭氏がコーディネーター、講師5名がパネラーとなり、聴講者も交えての質疑応答、意見交換を行った。会場からの技術に関わる質疑応答を除き、概ね以下のような内容が議論された。
● 最初に、昨年のNHKテレビでの不明水問題の報道に対するコメントが求められ、地方自治体の状況の一部が報告された。
● 不明水対策の効果がなかなか上がらないが、現状では地方自治体が困っている具体的なことを解決するのがよいとの意見が出された。
● 不明水対策を講じるときには、住民からの情報も必要ではないかとの見解も示された。また、水利用の歴史を知るところから考えていく必要がある、という意見も聞かれた。
● 水位主義下水道という考え方は、量の問題を疎かにする危険性があり、技術力を削ぐことになりはしないか懸念される、また、シミュレーションは中間がブラックボックス化する、という声も聞かれた。これに対して水位主義下水道は、あくまで見せ方のことであり、量や収支を理解した上で水位を示すものという説明がなされた。
● 不明水問題は、事業として進めていけば、その効果は非常に大きいが、対策の一つとして横引きマス・マンホール接続方式が挙げられる、などの考え方も紹介された。

【開催日時】 2017年1月27日(金)13:30から
【会場】測量地質健康保険組合健保会館7階大会議室