水環境ひろば① 東京の川の(いま)(むかし)~首都圏の川を対象に~
             7月28日(火)15:10~16:40
コーディネーター  NPO法人 日本水フォーラム マネージャー 石原 小枝 氏
講 演  「東京の川の今(いま)昔(むかし)」
  公益財団法人 リバーフロント研究所 理事・技術参与 土屋 信行 氏
 
事例発表 「環境とまちづくり」
  NPO法人 エコロジー夢企画 理事長 三井 元子 氏 
「新河岸川水系 市民・漁協連携でのアユ復活活動
  新河岸川水系水環境連絡会(魚類調査プロジェクト・川漁師) 佐藤 正康 氏 
「都川つれづれ日記」
  NPO法人 都川の環境を考える会 理事長 武部  功 氏 
総合司会      NPO法人 21世紀水倶楽部 理事 山下  博 氏  
開催報告
 初日の「水環境ひろば」は、21世紀水倶楽部理事の山下博の司会で、公益財団法人リバーフロント研究所理事・技術参与で、『首都水没』(文春新書)の著者である土屋信行氏と、コーディネーターの石原氏の紹介から始まった。
 コーディネーターの石原氏はまず、国内外の水問題の解決に寄与することを目的として開催された、平成16年の第3回世界水フォーラムを契機に設立された日本水フォーラムの設立趣旨や活動内容の概略を紹介し、流域や川のエキスパートが参集して開催される今回の「水環境ひろば」の意義などを述べ、基調講演の土屋信行氏にマイクを渡した。
 土屋信行氏は「東京の川の今昔」をテーマとして、江戸時代以前から現在に至る東京の川の変遷を講演。江戸時代以前の、現在とは全く違う姿の隅田川等、江戸時代になって行われた徳川家康の東遷事業による舟運路の開拓で栄えていく江戸のまち、明治期の日本橋川、同時期における、♪汽笛一斉新橋を、の歌に代表される鉄道建設事業に端を発する河川埋立事業、明治43年の東京水害を契機として整備された荒川放水路・江戸川放水路、荒川放水路の開削工事中に発生した関東大震災、第二次世界大戦の戦災復興で、主にガレキの処分先として行われた川の埋立、さらに1964年の東京オリンピックを迎えるために行われた道路整備による川の埋立などが紹介されたが、現在はなくなった川を取り戻すための取組みが行われ始めており、そのために「NPOの皆さんと一緒にがんばっていきましょう」として講演を結んだ。
 続いて参加団体からの事例発表があったが、まずエコロジー夢企画の三井氏は、同NPO法人の活動内容を説明した後、同NPO法人の前身時代の平成7年から始めた綾瀬川浄化提案に関わる取組みを事例発表した。綾瀬川は全国でもワースト1を競う汚い川であったが、同NPOでは水質がきれいになった時点で川の水を湿地帯に引き込んで植物浄化を行い、さらに川を境にして隣接する埼玉県八潮市と足立区に橋を架けて交流を深めようというまちづくりの提案を行った。そしてその提案に基づき、河川管理者である国土交通省や足立区などが動き、その提案が実現できた。こうした取組みが実り、昨年、東京湾から綾瀬川にアユが遡上したことが確認された。
 次に、新河岸川水系水環境連絡会魚類調査プロジェクト・川漁師の佐藤氏が、新河岸川流域(水系)におけるアユの復活を紹介し、それに伴う同連絡会の取組みを報告した。新河岸川流域(水系)は、西の狭山丘陵から東の板橋区、そして北の埼玉県川越市、南の東久留米市の間を流れるが、アユは下水道の整備効果から、東京湾から隅田川、隅田川から新河岸川に来るようになった。その間、落差上等の、アユの遡上に障害がある場所があるため、土のうを積むなどして手作りで漁道をつくる作業を実施した。また、近隣の小学生たちと一緒にアユを捕獲してその生育状況の調査も行っている。最近は、下水処理場より下流の新河岸川で捕獲したアユなどの魚を食べておいしさの調査も行うようになったが、下流域は下水臭で食べられる状態には至っていない。新河岸川流域(水系)の最近の生き物調査では、外来種のカワリヌマエビが増えている。
 事例発表の最後に、千葉市内を流れる、全長13㎞の都川の環境を考える会理事長の武部氏が事例発表を行った。昭和40年代の都川は、水が白く濁り、ヘドロが浮かび、メタンガスが発生するような川で、自転車、バイク、洗濯機、ドアなどのゴミが散乱する場所だったが、下水道の普及とともに水質が改善し、現在ではカワアナゴ、ナマズ、スッポン、モクズガニなどたくさんの生き物が生息する場所になっている。同NPOではこの都川の環境を守るために、行政とともに清掃、生物生息空間の整備、水質調査、生態調査、環境学習、植樹などに取り組んでいる。根本的な問題として「川を汚さない切り札はあるか」に悩んでいるものの、今後ともがんばっていきたいと締め括った。
 事例発表の後に行われた、来場者を交えての総合討議では、NPO活動の意義について話題となったが、その中では「NPO活動を通して人の心を育てる」との会場からの発言が目立っていた。

 
   
 土屋先生の講演
   
 事例発表