バイオフォーカスWTプロジェクト 京才俊則 |
1,概要 パンフレット 昭和60年度から5カ年、建設省総合技術開発プロジェクトとしてバイオフォーカスWT、正式名「バイオテクノロジーを活用した新排水処理システムの開発」が実施された。本プロジェクトは、バイオテクノロジーを活用して、次に掲げる下水処理の課題を解決しようとしたものである。 ○省エネ・低コスト ○省スペース ○高度な処理水 ○有価資源の回収 ○容易な維持管理 ○有用微生物の発見 上記目的を達成するために、研究開発は次の8課題に分類された。 ○排水処理にかかわる微生物バンクに関する研究 ○遺伝子操作の処理微生物への適用に関する研究 ○微生物の固定化に関する研究 ○下水処理バイオリアクタ-に関する研究 ○汚泥処理バイオリアクタ-に関する研究 ○水質計測用バイオセンサーに関する研究 ○前処理用固液分離装置に関する研究 ○新下水処理システムに関する研究 バイオフォーカスWTの実施に当たっては、産学官の学識経験者から成る委員会を国土開発技術研究センターに設け、研究開発方針、成果の検討、審議をして頂いた。 本プロジェクトは、下水処理に対してある種の革命的な役割を果たすもので、従来の下水処理に異種技術導入を図る必要があると考えられた。このため、昭和60年6月に民間企業等とも共同研究ができるように改訂された「建設省研究所等共同研究実施規定」によって、30の民間企業と36の共同研究を行った。このうち27の共同研究で、パイロットプラントによる実験を含んだ、新しい下水処理技術の開発がおこなわれた。 2,共同研究パイロットプラントの公開 昭和63年11月 昭和63年11月、報道関係者に対しバイオフォーカスWTに係る28団体、29のパイロットプラントが公開された。このうち、13社、1法人の14プラントはバイオフォーカスヤードに集中して、14社の15プラントはバイオフォーカスヤード以外の全国各地に設置された。公開には15の新聞社と3つのテレビ局が参加した。 3,バイオフォーカスヤード配置図 バイオフォーカスヤードとは茨城県霞ヶ浦流域下水道事務所の湖北処理場に設けられたバイオフォーカスWTのパイロットプラント実験実施のため用地である。 4,共同研究パイロットプラントパンフレット 昭和63年の報道関係者への公開時に配布された29の共同研究パイロットプラントのパンフレットである。A4表裏を基本に、各プラントの写真、開発目標、フロ-シ-ト等がコンパクトにまとめられている。 5,バイオフォーカス最終報告書 平成3年2月 本プロジェクトが終了した2年後の平成3年2月にバイオフォーカスWTの最終報告書が公表された。8つの研究課題と36の共同研究の成果すべてがまとめられた。A4判、765ページ、厚さ4cmという大部なこの最終報告書は、好気性(高度処理を含む)と嫌気性の水・汚泥処理微生物の固定化法、バイオセンサー、有用微生物の分離・培養、嫌気性の水処理法、膜法、バクテリアリーチング、固-液分離法などに意欲的に取り組んだ結果で満たされている。現在でも研究開発に携わる技術者・研究者の必読書であろう。 6,土木研究所講演会 平成8年2月 バイフォーカス終了して6年が過ぎた平成8年2月、平成7年度の土木研究所講演会で「研究開発成果の活用―バイオフォーカスWTのその後―」が発表された。バイオフォーカスWTで開発された新しい下水処理技術はその後、どのように実用化されたかをまとめたものである。この時点で、5つの開発後術が8つの公共団体によって採用されている。 |