社会の基本的インフラである下水道は、財政状況のいい大都市から事業が進み、現在財政力の乏しい中小市町村が整備段階に入っている。補助金不要の論議は、普及が進んだ地域からの感じがする。下水道普及が遅れている地域は、財政状態がよくない。こういう地域では委譲される財源もなく、結局見捨てられたことになる。財政状況がいいのに、これまで多額の国庫補助をもらってきた地域との不公平は増すばかりになる。
地方交付税で措置という声があるが、地方交付税は税収が多い地域からのお金を税収が少ない地域へ分配するものであって、まさにこれは補助金であり、財源移譲すれば本来なくなってしまうものである。
また下水道整備には水質保全の要素がある。一般的に財源が豊かな下流地域のために、財源が乏しい水源県のような地域でも水質保全が進むよう高額な高度処理施設など国が補助することによって進んだ。補助制度がなくなると広域的な水質保全の確保があやしくなる。
今回流域下水道事業について財源を地方に移譲して補助を廃止する声があがっている。流域下水道が対象になったのは今回県事業に止めておこうという配慮からの感があり、基本的に下水道事業の補助の問題であると考える。現在事業に力を入れているのは財政力が乏しい中小の市町村であり、これらの地域は移譲される財源もない。従って下流の水質保全のため下水道事業を行うのに補助金は不可欠である。
しかし地方の状況に応じて効率的な執行を実施できるようにすることは重要なことである。複数年度で実施すればいい仕事を単年度毎に縛ることはやめるべきであるし、設計積算ももっと実施主体の裁量にまかせるべきであると考える。
大都市圏の普及が進んできた今、役割の分担を考え直すことも必要である。
この中で、流域下水道事業の市町村への移管が効率的と考えられるところも相当あるのではないだろうか。根幹施設の整備が一応できあがり、県の体制で実施しなくても公共下水道と一体管理して行く方が効率的な場合がある。国、県の負担は行うものとして、主たる市への一括委託、広域連合などによって一体的に運営管理することにより、事業責任の所在がはっきりし、排水設備などの運用、除害設備の指導など複雑な下水道法行政手続きも能率的に行えるようになる。
一方で、公共下水道の高度処理施設は財源を今の流域下水道と同じ程度に引き上げるべきである。下流の水質保全のためのいわば余計な施設である高度処理施設について、事業が進まない現状を打開するため、事業促進のインセンテイブが求められる。
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