水倶楽部会員:齋藤 均
T.農学博士:国総研:吉田綾子様の発表について
以前から、ディスポーザーについては興味を持っており、非常に勉強になった。
特に、実験フィールドとなった北海道歌登町は、処理施設に余裕のあるOD法で、ディスポーザー実験に対して、住民が協力的であったことも感動した。 発表の中でも言われたが、雪国の北海道で、冬場にゴミを収集する行政側の負担は、非常に大きい。 ゴミステーション自体が雪に埋もれてしまうのだから。これは東京に在住していてる、厚生省の役人の方々には、どれくらい困難な作業であるか想像が出来ないであろう。 また、町内にゴミ回収車が1台しかない事もあり、出来るだけ回収回数、頻度を減らしたい。 また、生ゴミは約70%程度以上が水分と言われている。 他の可燃ゴミは、流動焼却炉等の場合、一定以上の温度をキープする事が出来るため、一度焼却過程が安定してしまえば、補助燃料が不要であるが、生ゴミのために、通常は補助燃料としてA重油が使用されている。石油資源の枯渇が叫ばれている現在、廃棄物の減量化のために、貴重な資源を利用するのは、非常に「もったいない」。したがって、後述する廣本氏の発表のように、「生ゴミ」と「可燃ゴミ」は分別すべきである。
また、ディスポーザーにより、生ゴミを下水道側に負担させてしまえば、可燃ゴミの回収する量は減るし、ゴミ回収車から滴る生ゴミを圧縮したときに出てきた汚水が、道路に点々と続くと言う、非衛生的な状況も回避できる。 また、北海道の夏はキタキツネなどが、生ゴミを食べ散らかしている場所もあると聞く。 キタキツネは保護動物なので射殺や、駆逐することが出来ない。
流入水のデータとしても、ディスポーザーの導入により、流入水質が悪化するが、OD法はその方式からして、水処理施設に余裕をもつので、問題が無かった。 一応流入水質は、ディスポーザーを全戸に普及させても充分対応可能である。 これは、吉田氏のデータと推測によれば、全戸ディスポーザーを導入しても、流入負荷は、20%程度しか増加しないと思われるからである。
また、設計流入水質はその町の社会状況から判断するのだが、通常、一般的な値としてBOD200mg/L SS180mg/Lの値で設計されている。
OD法のような、浮遊生物型好気性処理法では、MLSSを上げてやれば、BOD300mg/Lぐらいまでは負荷がかかっても処理可能と思われる。 基本的にはかく拌ローターの回転速度を上げて、酸素供給能力を上げてやればいいわけだし、返送汚泥量を調節する事で、充分対応可能である。
また、流入SSが増加する事から、当然の事として、発生汚泥量が増えるが、牧畜を行っているので、全量コンポストとして利用できる。 これもメリットである。
下水道コンポストの弱点は、その中に重金属等の有害物質が含まれているのではないかと言う悪いイメージが払拭できない為である。 そのために、コンポストの需要が伸びない。
しかし、米国が対海外リン輸出規制をかけた現在、コンポストは非常に有効な資源である。
今回の歌登町の実験においては、牧草などにコンポストを利用する事で、需要が確立されているわけだから、非常に有効である。 リサイクル社会の実現への第一歩として、期待が持てる。
管路内の堆積物についての知見も述べられたが、主に、卵の殻と貝殻である事が分かった。 また、それらは、流速60cm/sec
以上であれば、比重が軽い事もあり、フラッシュアウトされてしまう事も分かった。 一般に堆積物は、土砂や固形油分が多い。これらは分流式の場合なかなかフラッシュアウトされない。 管路は当初は処理場側に自然流下するように勾配をつけて施工するが、その後の上載荷重条件等により、不陸が生じる。 今回も逆勾配のところに卵殻が堆積していたとの事であるが、その成分は、無機的なものであり、卵殻内側の卵膜などの有機物も、その有機物を基質としてバイオフィルム等を形成し、管路内に付着する以前にフラッシュされてしまうように思えた。
堆積物の比重も軽い事であるから、通常の管内清掃は高圧洗浄水を用いて行われていると思われるが、このような堆積物の場合は、「ピグ」を用いたほうが有効であると思われる。 「下水道協会誌」に管路内洗浄において、高圧水洗浄と、ピグを用いた洗浄を比較した場合、ピグの方が安価で効率的であったと報告されていたと思う。(誌名はあやふやです)
結論として、吉田氏の発表された、国総研の歌登町ディスポーザー導入実験は成功と評価できる。
国土交通省は、「ディスポーザー解禁」の様なコメント的なものを発表したが、それは、各市町村の社会環境により、実現の可否が異なる。 例えば、現在の東京都で導入したら、合流改善も終わっていないのに、大問題になってしまうであろう。 したがって、国土交通省側が、「ディスポーザー特区」等を設けて、その実現の可否について認可するようにすればよいと思われる。
その為には、国総研下水道部などのノウハウを蓄積した機関が、シュミレーション、現地調査、現場実験、などを段階的に行い、生ゴミを下水道で処理する、というリサイクル社会への第一歩を実現したらよいと思う。
最後に、貴重な知見を提供していただいた、吉田綾子博士に、心から感謝の意を表明します。
U 「ディスポーザーを用いた資源循環型社会の提案:荏原実業滑驩諱E開発室長 廣本真治郎 様の発表に対しての感想・意見
0.はじめに:おわび
上記の吉田博士の発表に関する感想の中に、「国土交通省がディスポーザーを解禁する様なコメントを発表した。」と齋藤が書きましたが、誤りです。 国交省はそのような発言は公式にはしておりません。 謹んでお詫びします。
1.本論のはじめに
廣本氏のパワーポイント(以下PPT)の3ページ目にあったように、国土交通省では、集合住宅の場合、「処理槽をつけて、下水道に放流する基準程度まで処理できるような場合にのみ、ディスポーザーの設置を許可する。」としている。(私も混乱して間違えました。これが最初に来ています。)
これを逆手にとって、いいかげんな業者が「あなたの家は集合住宅なのだから、ディスポーザーを設置してもいいのですよ。」などと、怪しげな訪問販売をして、多額の料金を被設置者からせしめていると言う実態がある。 もちろん、業者は中間マージンでかなり設けているのであるが、被設置者も、「高かったけれど、なるほどシンクに生ゴミはたまらないし、これは良いや。」と使っているのも事実である。 また逆に、いいかげんな高額負担により、年金生活のお年寄りの生活などを圧迫して、ローンの取立てなどをやくざまがいに行っているのも事実である。
2.廣本氏の発表に関して
PPT6ページにあったように、一般廃棄物の47%を占める生ゴミを、ディスポーザーの導入により、汚水処理施設に分担させる事が出来る。 前回の吉田博士へのコメントで、「生ゴミは自燃しない」と言ったが、一般廃棄物のゴミ処理施設で、生ゴミをカットする事で、高温・高効率な焼却、ゴミの減量化を行う事が出来る。 一般にゴミ焼却施設で800℃以上の高温で焼却すれば、におい成分やダイオキシンも熱分解されてしまうといわれている。 生ゴミ以外の可燃ゴミは、空燃比を最適に保ってやれば自燃する事が可能である。
ごみ焼却において、生ゴミが投入される為に、補助燃料としてA重油を使用しなければならない。 A重油からも、加水分解してやれば、幾らでもガソリン、軽油を生成する事が出来るのだから、廃棄物の減量化のために貴重な資源を消費するのは、非常に「もったいない」。
また、ディスポーザー(以下DSP)の導入に伴うメリットとデメリットについて紹介された。
利便性
・室内衛生環境の改善
・ゴミ搬出量の低減:ゴミ収集車が毎週のように何回も周回するのは大変。
・高齢化社会への対応:老人がゴミステーションまで生ゴミを出しにいくのは大変。
(コンポストとして緑農地還元)
メリット:ゴミ処理への影響
・ゴミの収集・運搬・処理・処分の効率化
・収集場の衛生環境の改善:カラスなどの動物によるゴミの散乱被害が無くなる。
・有価資源の再利用の促進:コンポストなどに有効利用できれば、効果抜群。
デメリット:水処理施設への影響
・汚濁負荷の増加
・管路内での固形物の堆積:これについては、後述する。
・ポンプ等機械設備への影響
・余剰汚泥の量と性状の変化
・運転および維持監理技術の改善
3−1 利便性について
まさにそのとおりである。 水倶楽部の会員自身はあまり自炊などはされないと思うし、食器洗いや、家族の残飯の整理などもされないと思う。 一度でも体験してみれば分かるが、野菜類は現在でもスーパーでも丸ごと皮付きで販売されているし、子供の食べ残しなどをさらに食べ様とは思わない。(中には頑張って食べてしまう主婦もいらっしゃるが。)
そうしたものは、従来、シンクの三角コーナーに入れられて、ある程度水切りされた後、次の可燃ゴミの日までビニール袋などに入れて、台所の隅などに保存(保管?)されていた。 これらは、2〜3日すると臭くなってしまうし、三角コーナーの中で腐ってしまう場合もある。 これらを片付けるのは、主に水倶楽部会員のご夫人たちで、会員諸氏が自分で行う場合はほとんど無いと思う。 このメリットは体験して欲しいと思う。 廣本氏のPPTで、DSPを導入する前のシンクと導入後のシンクが紹介されたが、まさに劇的な変化が生じる。 台所で発生する生ゴミは、ほとんど全部流しちゃえばいいのだから、非常に楽であるし、衛生的である。
自家用車に乗るようになったら、その利便性から手放せなくなってしまうように、DSPも使い出したら、利便性から手放せなくなってしまうだろう。 会員諸氏は男性が多いので、ほとんど自炊などを行う機会が無いであろうが、「母の日」等に、婦人の代わりに家事を行ってみてはいかがと思う。 炊事というものが、家事の中でかなりのウェイトを占めており、重労働である事が分かると思う。 かつ、シンク周りを食事を作る前の状態に戻すのに、食後にどれくらいの作業が必要かがよく分かると思う。
3−2 メリット:ゴミ処理への影響について
既に吉田博士への意見等で前述しているので、省略。
3−3 デメリット:水処理施設への影響
・汚濁負荷の増加
その1の吉田博士の発表の様に、水処理施設への流入負荷が増加する。 廣本氏のデータでは、水処理施設を集落排水とし、接触曝気型の処理施設でデータの検証を行った。 この場合、DSPを全戸普及させた時、流入水質で約10%のBODの増加が認められるとのことであった。 接触曝気槽の場合、固着生物型の処理装置なので、浮遊生物型の反応槽に比較して、流入水質の急激な変動には対応が困難である可能性がある。なぜなら、固着生物は浮遊型微生物に比較して、増殖速度が遅いと思われるからであり、また、固着生物の生物膜相で、微生物の生物ピラミッドが形成され、生物相として、安定しているからである。
ただし、一度固着生物型の処理装置で、濃い流入BODに対して、生物膜の馴養がなされた場合には、処理は安定してくると思われる。また、この場合には、ある程度のショックロードにも耐えられるようになっていると思われる。
また、DSPにより、繊維性のし渣が多量に流入するようになるとのことであるが、これは、荏原実業社が開発した、曝気式スクリーンにより解決した。
雨水ポンプ場で、開渠を流域内に持つような場合、スクリーンに、自転車や角材などが補足される事がある。 これと同じと考えてよいだろう。 雨水ポンプ場の細目スクリーンの目幅は5cmなので、角材がすり抜けて、縦軸斜流型の高速回転ポンプのインペラを壊した話などは、良くある話だ。
DSPの破砕機の後段に、回転式シェーバーの刃のような物を取り付けておけば、繊維状物質も、裁断されるのではないだろうか? 今後工夫してみる必要があるかも知れない。
・ポンプ機械設備等への影響
既に論じたが、現在の汚水ポンプは縦軸斜流型ポンプが主流である。 地方都市でメインとなっている、マンホール型ポンプでは、2〜3号マンホールの中に、この縦軸斜流型水中ポンプが2台設置される。
もちろん、前段にスクリーンや除塵機は無い。 ポンプのインペラを、強化チタニウム合金のようなものにして、ある程度の夾雑物は、砕いて圧送してしまう。 2次元に長いものについても、材木のようなものは無理であるが、髪の毛程度であれば、インペラに刃がついているので、流速の差で切断してしまう。 また、インペラに絡まってぐるぐる巻きついたとしても、そこに他の夾雑物が衝突すれば、かみそりの刃に巻きついているようなものなので、切断されてしまう。 ただ、時には、このような巻きついた髪の毛などの夾雑物を取り除くメンテナンスは必要である。 マンホールポンプの大手は残念ながら渇`原実業さんでは無いので、この辺のノウハウをディスポーザーにフィードバックするのは困難かもしれない。
ここで、髪の毛について論じたが、髪の毛は同じ太さの鋼線よりも強度があり、髪の毛が切断できれば、大概の繊維は切断できる。
したがって、廣本氏が心配しておられた、2次元の夾雑物による下水道(あくまでも下水道)への影響は、それほどではないと思う。 ただし、ディスポーザーで流入する台所からの生ゴミが細切れになっている場合という条件付きである。 ディスポーザー側も、投入した生ゴミを砕くのに、クラッシャミルの様な装置がメインであったが、その後段に、回転式髭剃りのような、長繊維用剪断機を設ければ、もっと良くなると思う。 どのみち、回転装置なので、同軸上に配置すればいいのだから。 この辺は、開発の課題であろう。
・余剰汚泥への影響・運転管理への影響
ディスポーザーをつければ、下水処理場に流入するSSの量は増加する。 標準活性汚泥法でも、OD法でも、基本的には水に溶けている汚濁物質を、微生物の菌体増殖という形で固形物として補足し、それを最終沈殿池で、流入してきたSS分と一緒に除去する。 ディスポーザーで投入された生ゴミは、汚水に溶存した汚れではないので、主に最初沈殿池または最終沈殿池で、初沈・余剰汚泥と一緒に除去される。
つまり、除去される汚泥量が増える。
基本的に、人口2万人クラスの処理場の場合、汚泥処理系に余裕を持っている場合が多い。
特に、最大処理水量1万m3/日以下の処理場では、汚泥処理系に余裕がある。 なぜなら、水処理系列は、流入水量の増加に応じて、1/4系列・2/4系列・・・と建設していくが、汚泥処理系列は、そのコスト比較から、最初から全量対応・もしくは1/2系列分と建設し、間欠運転を行っているケースが多いからである。
2007年問題や、企業が排水を出さない工夫をしたりしている結果、15年先を目標に建設された、下水処理場は処理能力に余力を持っているところが多い。 特に、処理水量5千m3/日以下の処理場では、通水10年程度では、汚泥処理施設は間欠運転であろう。
したがって、余剰汚泥は増加するが、中〜小規模の分流式処理場に関しては、状況判断によるが、ディスポーザー導入による発生余剰汚泥の処理施設の問題は大きくないと思われる。
ただし、廃棄する(有効利用する?)べき、処理場から排出される余剰汚泥の量は、確実に増加するので、吉田博士のフィールド実験のように、確実に処分先が確保されていなければならない。
多分、首都圏内では困難であろう。
しかし、米国が、対外リン輸出を禁止した事から、余剰汚泥を利用したコンポストは非常に有用な資源となりうる。 ちなみにリンと窒素であるが、リンは植物の光合成の中でADP〜ATP回路にかかわっているので、微量でも効果があるが、窒素は植物の種類によって、必要な濃度(量)が異なる。
リンは、塩化第二鉄などの凝集剤によって、沈殿・回収が容易である。
窒素については、嫌気・好気運転で、大気中に拡散してしまうしかないであろう。 もともと大気中の窒素を固定した生ゴミなのだから、窒素を大気中に戻しても差し引きは同じである。
だいぶ脱線したが、3−1〜3で述べたように、ディスポーザーを導入しても、現在の分流式の下水処理場では対応がある程度可能であると思われる。 あとは、国土交通省が、どの地区ならば、ディスポーザーを導入していいよという判断を下すかどうかというところだと思う。
また、この判断は、ある程度タイムスパンが必要である事から、下水道協会や、わが21世紀水倶楽部などで、4〜5年の実地調査を行い、その結果を元に判断すべきであると思う。
中途半端になってしまったが、廣本様のおかげで、最新のディスポーザーの状況について、知見を得る事が出来ました。 心から感謝します。 また、ディスポーザーを取り巻く具体的な社会環境の問題が分かり、とても勉強になりました。
V 「DSPを導入するに当たっての課題は?」:フリーディスカッション
1.はじめに
廣本氏が、DSP推進派の代表のような形で発表を行ったので、同氏を壇上に置いたまま、フリーディスカッションのような形になった。 基本的には、DSPの導入に対する質問が主であったが、思いつくままに列挙し、私のコメントも付け加えようと思う。
2.以下、ディスカッションの内容について。 順不同
@.廣本氏の発表から:「DSP使用時に、粉砕された生ゴミを流下させるだけの水を流さなかったために、排水管が詰まってしまうことがあった」と発表があり、同氏から「これについては、もう少し水を流すようにすれば、DSPの配管は詰まらない。また、使用する水道の水の量も全体的にはそれほど増加しない。」と説明があった。
これについて、内田信一郎氏(日新技術コンサルタント)から、「配管を工夫して、DSPが運転している時には、適量の水が流れるように出来ないのか」という質問があった。 僕も同感である。
シンクの下の配管を覗いて見れば分かるが、通常、蛇口の機器の交換が出来るように、水道の配管と排水の配管がシンクの下の空間にむき出しになっている。
最近良く見かけるが、公衆便所などでは、感知センサーにより、使用後に電磁弁で適量の水が流れるようになっている。
廣本氏から紹介された渇`原実業のDSPは、スイッチが別体式で、スイッチを入れて、排水口にある二次スイッチをひねることで、DSPが働くようになっている。 この時に、連続運転や、単発運転も出来るそうだが、感知式スイッチを設置するより簡単な電気回路で、電磁弁を作動させることが出来る。
配管工事は面倒になるかもしれないが、DSP本体の最上部かつシンクの下の内空部で、水道配管をつなぎ、DSPが作動する時には、DSP内に自動的に水が流れるようにすることは出来ると思う。
歯医者に行った事がある人は分かると思うが、口をゆすぐコップを取り上げると、吐き出し水の受け皿に、洗浄水が自動的に流れて、コップを置くと自動的に所定の量の水が入って、水が止まるという、あの感じである。
そうすれば、DSPを運転する際に、より操作が簡単になるし、DSP流下用の水の調整を経験値として会得する必要も無くなると思う。
A.内田氏から:「DSPを使用している時に、流しのU字トラップが詰まったら、通常の水道配管業者には直す事が出来ない」とあった。
廣本氏は、「それは課題です」というお答えだけだったが、僕の考えを示したい。
我が家は、通常のユニット式の流し台で、レンジから調理台、シンクまで一体構造になっている。 シンクの高さは約80cm シンクの深さは、約20cm シンク下の空間の高さ、約48cmである。 シンクにおいては、U字トラップは無い。 廣本氏から紹介されたDSPの高さは約40cmなので、DSPがぎりぎり取り付けられるという状況である。
まず、U字トラップの意味から考えてみる。U字トラップは、汚水管からの悪臭を逆流させない・ねずみやゴキブリなどの侵入を防ぐという意味から取り付けられている。 同じような意味で、水洗便所の大便器には水が溜まっているし、お風呂の排水口には、クラゲ型の水封式トラップが付いている。
つまり、DSPの中に、トラップを組み込んでしまえば、流しにU字トラップは要らなくなってしまうのである。 DSPの構造図を見てみると、DSPで破砕された排水は、電動機の直上から横流しになっているが、縦に水を落として、下にクラゲ型の水封トラップを取り付けることは出来ないのだろうか?
その為には、電動機などの機器類の高さを抑える必要があるが。
クラゲ型水封トラップを通過した後は、横流し排水管などを接続し、そのまま排水管へ接続すれば良い。
まずDSPは、流しの下に固定されている。 多分その荷重は、シンクの裏側にかかっていると思われる。 すなわち吊り下がった状態。 そして、DSPのメンテナンスのために、DSPの破砕部分は、トルクレンチなどを用いれば、外す事が出来るようになっていると思う。 さらに、その下にクラゲ型水封式トラップがあれば、トラップの閉塞は、一般の水道配管業者にも修理可能であると思われる。 また、DSPから横流しにした配管は、この作業の前に外せば良い。
U字型トラップにおいても、下側の逆J字管は、取り外してメンテが出来る様に、排水管に固定されていない。
つまり、DSPの本体を工夫し、DSP外部にU字管を設けなくし、それでも水封トラップの機能を満たすように工夫すれば、この問題は解決する。 電動機の高さを低くすることは、日本の技術でいくらでも可能なので、この提案は、実現可能であると思う。
B.坂戸・鶴ヶ島下水道組合様から:「現在、下水道管の閉塞、特に固形油分で困っている。DSPなどを導入したら、下水道管の閉塞頻度が高くなるのではないか?」という質問があった。
当日、僕がこの質問に対して、以下のように答えた。
「DSPが導入されれば、下水排水中の比熱が大きくなるので、油分による閉塞が低くなるのではないか?」:これはちょっと無責任な発言であった。 少し反省している。
しかし、DSPを導入すれば、SS分が増加することにより、下水管内は、野菜くずなどのやわらかいものによるが、常時こすられている状態になる。 したがって、管渠内の油分もそれらにこすられて、流下して行く事が考えられる。
また、油分として下水道管内に閉塞するのは、動物性脂肪、常温で固体の脂肪である。 閉塞する場所を下水道マップ上に記載していけば、閉塞しやすい場所がおのずと分かる。 その場所に「カラッとラードで揚げた豚カツ屋」などが存在していれば、行政的に指導する事も出来ると思う。 また、それらのラードは、燃えるゴミとして回収すれば、動物由来であるが、固形燃料として、可燃ゴミの補助燃料?になると思う。
植物由来のサラダオイル等については、行政側の負担にもなるが、ビンなどに入れてもらって、液体のまま回収し、ごみ焼却場のA重油に混ぜてしまって、一緒に燃焼してしまうことも不可能では無い。
また、固形油分による管渠の閉塞であるが、管路の清掃の際に、高圧水洗浄を行うのは逆効果である。
固形油分は、冷えればますます硬くなるのだから、高圧水によって、管渠内壁にへばりつくように広がって、洗浄効果が上がらない。 こうした場合はピグを用いるのが一番良い。
日本下水道事業団の元エースセンターの送泥管の掃除も、ピグを用いて行っている。
ピグとは、空気鉄砲のようなものである。 管径ぎりぎりの大きさの半硬質ウレタンのような栓を、圧力をかけて押したり、先に紐をつけて引っ張ったりするものである。 この方式だと、一度に全断面を掃除出来るので、高圧水洗浄より、効率的であるし、費用も安価である。 この検討比較については下水道協会誌(誌名はあやふや)に紹介されていた。
高圧水洗浄では、管内に蓄積した砂分や、固形油分を、水圧によって下流方向に押し流す。 すると、下流に行くに従って、押し流さなければならない砂が増えていってしまう。 それと比較して、ピグを用いた場合は、ピグを下流方向に押し込んでいけば、ピグの前面に砂や固形油分がドンドン溜まり、押すための力が次第に大きくなるが、ロスは少ない。
以上、坂戸・鶴ヶ島組合様からの質問に対する、正確な解答ではないが、意見として述べさせて頂いた。
C東京都様から:「合流式下水道に対する、DSPの導入はどうしたら良いか」
これに対し、下水道管内FTTHにより、雨の日はDSPを使用しないようにコントロールすれば良いという意見もある。 では、雨が続く梅雨のような時期はどうしたら良いのだろう?
中高生を抱える4人家族のような家庭で、「雨の日には、DSP使用禁止」などとされたら、パニックである。スーパーで販売されている食料のうち、そのまま全部食べてしまうのは、お米と肉ぐらいで、魚の骨、野菜の皮、果物の皮、4人分だったら、1食で三角コーナー2杯分は出る。 これを家庭の主婦もしくは主夫に求めるのは、無理といえよう。
東京都にとっては申し訳ないが、合流式下水道の改善を行うほうが先決であろう。
地方に住んでいる僕にしてみれば、そもそも何もかも東京を中心にしているのがおかしいのであって、東京を居住するのに、不便な町にしてしまえばいいのである。
というより、ほとんどの会社が東京に本社を置いているのがおかしいのであって、地方に分散すればいいのである。
首都圏内に入るが、さいたま新都心の周辺。このあたりには、まだまだ空き地があるし、高崎線の熊谷。宇都宮線の小山。それから、秋葉原に直結できるつくば周辺。そのようなところに各会社の本社機能を移転し、それに伴い、東京都の居住人口を削減し、合流式下水道を全面的に分流式下水道に改善するようにもって行くしかないのではなかろうか?
あるいは、大阪市のなにわ大放水路のように、地下空間に第3.第4神田川を作り、雨天時の合流汚水を貯留し、晴天時に処理するようにする。
また、国土交通省が行っているメガフロートを応用し、熱海市浄水管理センターのように、東京湾に浮かぶ下水処理場を建設し、増加する汚水に対応する。
僕の意見としては、「東京都では、DSPは使えないですよ。それでも良ければ居住してください。」と言うしかないと思っている。 たぶん、この意見に関しては、東京都民からは、猛反論や反対意見を頂戴すると期待している。
東京都は、やはり合流改善が最優先される事項だと思う。
DDSPの性能について、その他
これは、廣本氏と直接ディスカッションしたのであるが、現在、DSPの標準基準というものが無い。したがって、Uの冒頭で述べたように、やくざまがいのいんちきDSPを高値で売りつける等の被害も出ている。 下水道に関する機器なので、日本下水道協会か、あるいは、何らかの公的機関が、「認定書」を作成し、基準とされる能力を満足していないと、「認定書」のステッカーをDSPに貼ってあげないというような方向にしなければならない。
たとえば、日本の工業製品は、JISマークが貼ってあれば、安心して使える。 DSPもそうする必要がある。
また、認定されたDSPを販売する場合には、顔写真入りのライセンスを持った販売員が正式に販売するようにする。 もちろん、取り付ける際にも、認定された配管会社あるいはDSPの販売会社がきちんとライセンス証を示して取り付け、アフターサービス、特に排水が詰まるケースが多いと思われるので、その場合に、すぐに対応できるように、連絡先をシンクのそばにシールで貼り付ける。 このように、良い製品を正しく販売し、アフターサービスも万全。とすれば、DSPの普及率は伸びるし、いかがわしい業者も駆逐できるであろう。
たとえば、新規に引っ越しした場合など、いい加減な新聞業者が勧誘に来るが、正規のライセンスを提示しない限り、契約しない。それと同じである。 野球チームを持っているY新聞の勧誘などやくざである。
現在各社がDSPをそれぞれ製作しているが、第3者機関が、性能諸元などを認定するようにしなければならないと思う。
わが「21世紀水倶楽部」はNPO法人なので、認定機関になることは出来ないと思うが、DSP部会などで、各社の製品の比較検討を行い、DSPの最低基準の規格を作るお手伝いは出来ると思う。
また、廣本氏が紹介したDSPは400W(ワット)用のDSPであった。したがって、DSPの設置に当たって、配電盤と配線工事が新たに必要である。 400Wの場合、200Vの電圧で2Aの電流が必要になるからである。通常家庭用の電源は、1000ボルト以上の3相交流で引き込まれている。(その方が、送電ロスが少ないから)
また、最近の家庭では、最低でも30Aのメインブレーカーが付いており、それぞれの配電の子ブレーカーに予備が1〜2個付いている。
(写真参照:これは僕の家・2LDKのマンションで、30Aの契約、子ブレーカー8個のうち右下の1個が予備)
つまり、30Aの契約であると、100V電圧用機器で、総計3000Wの機器が使用できるのである。 400Wの場合、100Vだと4A、200Vだと2Aとなるので、アンペア契約の日本では、400WのDSPは、200Vで運転したほうが好ましい。
要するに、日本では、屋内の配電盤で100ボルトの単相交流に変圧されているのである。だからクーラーだけ200ボルトという操作が出来る。つまり、400WのDSPは200Vで運転できる。 したがって、DSPが400Wでも配電盤内を細工し、屋内配線を工夫すれば、充分設置可能である。引き込みの電圧は1000ボルトなのだから、200ボルトに落とすのは大丈夫である。
ただし、配電盤に、写真の様に、DSP用の空きのブレーカーがあればの話である。
木造家屋などであれば、400W・200VのDSPの設置も、配電盤の条件さえクリアすれば何とかなるが、マンションの場合、コンクリートの壁をぶち抜くので、結構な工事になる。 これはちょっと厳しい条件である。
100WのDSPもあるが、こちらは電圧が低い分、やはりモーターの軸トルクが低く、破砕力が弱いということであった。 100WのDSPであれば、配線は楽である。 近くにコンセントがあれば、そこから電力供給することも出来るからである。
ただ、DSPの能力を考えた場合、魚の骨や、鶏もも肉の骨などもガンガン投入しても破砕してしまうような、強力タイプが好ましく感じる。 破砕力が強力な分、多少過剰に生ゴミを投入しても、破砕してしまうし、一気に破砕するので、たぶん運転時間も短くて済むと思われる。
僕自身が取り付けるとしたら、400Wタイプだと思う。 魚を丸ごと購入して、頭を落としてそのまま投入できるし、フライドチキンの食べ残しなど、そのまま投入できるからである。
お年寄りの家庭では、和食のやわらかいものが中心になってくると思うので、100Wタイプで充分と思う。
いずれにせよ、400Wタイプと100Wタイプで、それぞれの、最低規格を作成し、顧客の使用状況に応じて、製品シリーズをラインアップすれば良いと思う。 顧客は、それぞれの家庭の食卓の事情に応じて、ラインアップの中から、その家庭に合った製品を選択すれば良いのである。また、各メーカーがそろって競争開発すると思うが、それぞれの製品について、第3者の認定機関がきちんと検査し、製品に認定マークのシールを貼るようにする。
また、製品開発が進めば、DSPの能力がアップしてくると思うので、認定機関は、一定期間ごとに最低規格の見直しが必要である。
下水道に使用する管渠の材料、塩ビパイプなどについては、日本下水道協会が定めているので、DSPについても、認定機関としては、日本下水道協会が望ましいのではないかと、私は思っている。
ただし、本丸である国土交通省が、「DSPの使用は解禁していない。」という態度をとっているので、これをどうするかが課題である。
3.まとめ
小泉首相の政策で、構造改革によりいろいろな「特区」が誕生したが、Tで紹介した、吉田博士の「北海道歌登町」などのような背景を持つ市町村については、「DSP特区」として、DSPを普及させ、DSPそのものの価格を安くし、さらには、生ゴミの処理にかかる費用の低減を図るように、進めていけたら良いと思う。
さらに、現在、地方公共団体は、ゴミは無償で収集・処分しているが、DSPの導入により、ゴミ処理に費やす予算を削減し、「DSPの利用で便益を得ているから」という理由により、下水道の使用料をやや高めに設定し、下水道部門の採算を取れるようにしていけたらますます喜ばしいと思う。
4.おわりに
DSP分科会という事で、予想以上に反響が大きく、当日は会場にあふれんばかりの人が集まっていました。 人気があるという事は、それだけ、DSPを導入したいという潜在的要求があると感じています。 コンピュータの世界で、Windows95が発売された1995年に、誰も、現在のようなブロードバンド時代が来るとは思っていなかったでしょう。 たぶん、DSPについても、これだけ潜在的欲求が大きいので、あと10年もしたら、地方の市町村:分流式下水道を取り入れている市町村を中心に爆発的に普及しているのではないかと思います。
以上、3回にわたり、DSP分科会に参加しての感想を述べさせていただきました。 個人的な意見ですので、異論・反論多々あるかと思います。 感想・質問・意見等については正論広場に投稿して下さい。 特に会員以外の方の意見をお待ちしております。 いろいろディスカッションしましょう。
最後に、当日司会を務めていただいた清水 洽様、DSP分科会会長の奥井 英夫様、また、PPTで発表していただいた、吉田 綾子博士、廣本
真治郎様に心から感謝申し上げます。
なお、ここまでの論文を作成、掲載している間に、「下水道FTTH(Fiber To The Home)を利用して、雨の日はDSPの使用をを停止するように、遠隔操作すればいいではないか。」というご意見が多々寄せられています。 正論広場でも、この話題を一度取り上げています。 これについていろいろ考えてみたいと思いますので、次の論文を期待してください。 →時期は未定。
以上
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