会員論文の頁集中と分散の議論を新たな観点から−

 

平成17年度の総会後の講演会において、会員の佐藤和明氏から分散型サニテーションシステム(DESAR)の紹介(下記が配布の説明資料)があり、総会後の懇親会の席でも、この話題で持ちきりになりました。

「集中と分散」は下水道だけでなく、各種供給処理施設の配置計画において古くから議論されてきましたが、氏が翻訳・紹介された本の出版を機会に、新たな議論が始まることが期待されます。

当会としても、この「論文図書館」のスペースを活用して、皆様の議論が活発になる一助にしたいと考えます。ご意見を投稿希望の方は広報担当・望月までご送付ください(できればメール添付ファイルで)。下段の論文一覧に掲載します。

 

話題の「分散型サニテーションシステム」の本が出版される!

                                                                                           佐藤 和明

 

ごく最近「分散型サニテーションと資源循環―概念、システムそして実践」という本が技報堂出版より出されました。この本は主にEUの水処理研究者グループのメンバーが著者になりIWAから2001年出版された本 ”Decentralised Sanitation and Reuse - Concept, Systems and Implementation”の訳本です。この本の中では現行の下水道システムは、CUS(Centralised Urban System)としてこの分散型システム(DESAR)と対比されています。このDESARの概念は単に分散型排水システムというだけではなく、嫌気性処理を用いる省エネルギー型+処理水や汚泥の地域循環を考慮した資源回収型を指向するシステムとなっています。そして同様にし尿分離型のシステムも主要な構成要素として紹介されています。

ここまでくれば、慧眼の皆さんにはご想像のとおり、20世紀下水道システムに対する21世紀の
DESARという本書の主題は明確です。章ごとの分担執筆者によりこの辺のスタンスには多少の差がありますが、600ページという大部な記述に具体的な実施例もかなり出てくるという本書の内容は随分と説得力のあるものとなっています。

私など農村地区などはいざしらず、高密度に人口が集中する都市部では発展途上国といえども
DESAR の実現は難しいのではと思っていますが、その様に考えるのは旧態依然としている奴と一蹴されそうな主張、事例紹介が随分と出てきます。

このところ下水道と合併浄化槽に関するせめぎ合いの議論は、成熟段階に入ったのかと見ていましたが、この
DESARの登場により、集中と分散の議論がまた新たな観点から始まるような気がしています。

本当のところを言いますと、私もこの本の30名ほどいる訳者の一人となっています。ですので、このような状況を少しでも早く21世紀水倶楽部の皆さんにお伝えすることが、まず私の役目ではないかと感じた次第です。今後この問題についてどのように対処していくのか、皆さんとともに考えていきたいと思います。

 

論文一覧

NO 会員名 論文名(リンク)

趣  旨

1 佐藤和明 DESAR実施例

DESARが21世紀を先導するシステムとなるのか、先進的事例をじっくり評価する必要

2 森下幹夫 一読して 高密度に人口が集中する都市部では発展途上国といえどもDESAR の実現は難しいのでは
3 望月倫也 集合と分散、つきぬ論争に整理を 議論歓迎だが、単なるエコロジスト的精神論で主張されるのであれば、真っ平御免にしたい
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