2004シンポジウム「下水道と家庭用品を考える」講演概要質疑討論−1
司会:水倶楽部理事亀田泰武
T 司会からの質問
(1) 環境ホルモンは,現実にはどのような家庭用品に含まれているものなのか?
(南山)
・アルキルフェノールは,工業用の界面活性剤の一つであるアルキルフェノールエトキシレートの分解物である。
・例えば、SPEED’98のリストに含まれているフタル酸エステル類は、環境ホルモン作用があるかどうかは別にして、プラスチックの可塑剤なので,どこにでも存在しうる。
(北谷)
・Speed98の見直しが来年行われる予定であり,有害性などの検討が進み,項目数が減る方向と聞いている。
・環境ホルモンは工業的に使われているものが多く,ノニルフェノールなどは使用自粛も進んでいるようなので,今後は減るものと思う。
(2) アルキルフェノールは洗剤の主要物質なのか?
(南山)
・工業用として使用されている界面活性剤の分解生成物である。
・これらの物質については使用が自粛されているときいているが,流域内で製造・使用されていないと思われるところでも,下水の流入水中に存在する。
・欧米では,再生紙を用いたトイレットペーパーからノニルフェノールが検出されたと聞いているが、一方で,日本の製品では検出されないとの報告もあり、実際のところは良くわからない。
・環境ホルモンについては,その作用,存在実態、挙動について、よく解っていないのが現状。
(3) 家庭用品(家電)や生活習慣の変化で水の使用量など変わってきているように感じられる。節水型の普及やレトルト食品の利用による水使用量が減る要因もある。「洗剤を使わない洗濯機」が一時期宣伝されたがどう思うか。日本では,あまり汚れないうちに洗濯するので,もともと多くの洗剤は不要との話も聞く。
(服部)
・無洗米を洗って使うのと同じで,結局洗剤を使っているようだ。雑菌が多く残っているのでだめと言う人が多く,洗剤信仰のようなもの。
・日本においては,洗濯物を白くするのが洗剤と言うイメージがある。
・売れる型でないと,メーカーも商売にならないのだろう。
・欧米では,ドラム型の洗濯機が主流で,日本のタイプよりも洗剤が少なくてすむはずだが,
日本人が欧米で暮らす場合,実際には必要量の数倍の洗剤を使っているようだ。また,非常に時間がかかり,日本人向けではないようだ。
(4) 家庭用水量は,今後どうなるか(増えるのか,減るのか)?
(井須)
・売れ筋の家庭用設備からは微妙なバランス。
・浴槽はどんどん大きくなっており,日本人はきれい好きなので洗うものは多い。
・反面,食器洗い器は急激に普及してきており,これは節水になる。
・トータルでは徐々に増えると思う。
(服部)
・徐々にではなく,やはり増えている感じがする。
・ある施設で外部からの持込が原因であるがO157が発症し,その後,水の使用量が大幅に増えた。発症の恐さで神経質になっている。流し洗いが良いとの関連付けがあり,水使用量はどんどん増えると思う。
(北谷)
・横浜市としてみると,水道使用量は平成12年度をピークとし,15年度は2%減。
・これは下水道の料金として15億円の減収となっており,管理者としてはこれ以上減収(水使用量の減少)になって欲しくないのが実感。
(5) 下水中の汚濁量は,今後どうなるか(増えるのか,減るのか)?
(南山)
・予測できないというのが正直な感想。
・現場サイドの方の方が見えているのではないか。
(北谷)
・近年,下水量は減っているので,水質として上昇すると思うのだが,濃度としては横ばい状況であるというのが現状。
(服部)
・やはり増えると思う。汚れを出さない行動はPRや広めるのが難しい。
・コマーシャリズムは強く,例えば,消臭剤はあっという間に広がった。一見「清潔で豊か」な生活への要望であるが,そのことによって下水中の汚濁物質は増えることもあると思う。
(6) 抗菌・除菌作用を謳う商品が多く出ている。O-157などの感染の問題もあり,今後も増えていくだろうか。処理過程で,微生物が減少するなどの懸念はあるのか。現状程度の使用量なら問題ないのか。
(井須)
・汚れの一つに微生物汚れがあり、お風呂のぬめりなど。それに対し一番多く使用しているのは銀系。使っている範囲では,処理などにあまり影響していないと感じている。
・勘違いしてはいけないのが,抗菌は除菌とは異なる。菌は,放置すると次々に増えるが,抗菌処理で増やさないようにしているもので,減らす作用ではない。簡単に除菌(菌を殺す)ことは行っていない。
(南山)
・家庭で用いられている抗菌剤等の下水処理への影響は不明。
・かつて、トリクロサンが,処理場から処理されずに排出されていると報道されたことがある。これは、一部のハミガキ粉に含まれる成分。分析の高度化で,従来は検出されなかった物質が,検出されるようになってきており、今後の調査が必要。
(北谷)
・殺菌剤が処理場の微生物に影響あるかどうかについて,現状では,特に処理に悪影響が出ているとは感じない。
・例えば,糸状菌の増殖でバルキングが生じる場合,糸状菌の除菌に次亜塩素酸ナトリウムを添加する場合がある。糸状菌のみならず,他の微生物の除菌にもなるが,生物量が相対的に多いことから,処理に影響しない程度添加しているということになる。
・ただし,清澄な水に対しては,わずかな量でも影響があるかも知れず,今後調査が必要だと思う。
(7) 女性ホルモン(17β-エストラジオール)は,人工的な化学物質よりも,作用が大きく,処理工程での残留性も高いように聞いている。反面,前立腺がんの増加など,ホルモン治療も増えているのではないか。今後天然女性ホルモンによる影響は増えるのだろうか,あまりないのだろうか。
(南山)
・汚泥系等でのノニルフェノール類の挙動を主に調査してきたため、女性ホルモンについて詳しくは知らない。
・女性ホルモンは,ノニルフェノールなどよりホルモン作用としては大きいとされている。
・ピルの解禁で,合成ホルモン(エチニルエストラジオール)による汚染が懸念されたが,日本の水環境ではあまり検出されていないと聞いている。
・17β-エストラジオールは,多摩川などでの調査で、ある程度の影響があると推測されていると聞いている。
−続く−