水系伝染病(今はめだたないが家庭排水の後ろにある大きな影)
                               2003.3
/2006.6/9up

 ヨーロッパで下水道整備促進の大きな推進力であったのが伝染病に対する恐怖でした。水系の伝染病であるコレラ、赤痢などつい最近まで大きな問題でしたし、(世界の大半では依然として大きな問題です.。地球上のコレラ感染者は減ってきてはいますが年間25万人、死者は1万人です。)生活排水の処理が少しでもいいかげんになると汚染された水から復活してくるのです。
 通常の人は感染してもだいたい軽い症状ですみますが、高齢者、幼児、感染者など免疫力の弱い人に重い症状を呈する、抗生物質耐性のある黄色ブドウ球菌が最近問題になっています。水系伝染病でも同様のプリプトスポリジウムがいます。

 水系伝染病は医学の進歩、適正な下水処理、上水道の整備によって今は小さくなっていますが、排水処理がいいかげんにならないよう充分注意していかなければなりません。


病原性菌と生物処理
 コレラ菌、赤痢菌、O157菌など人にとっては大変恐ろしい存在ですが、下水処理場などの生物処理では活性汚泥などの微生物に食べられてしまい、生き残らず、川や海に出てくることはありません。また塩素や紫外線などの消毒で死んでしまいます。ただし処理がいいかげんだと川などを汚染します。

   過去の事件 腸管出血性大腸菌O157 大阪府立公衆衛生研究所HPから
            コレラ菌        大阪府立公衆衛生研究所HP 


クリプトスポリジウム(新たな汚染。ただし病状はそんなにひどくない)
 人が発病すると大量のタネ(オーシストといいます)が排出されます。このタネは非常に強く、生物処理の微生物の攻撃にも耐え、消毒処理でも平気なのです。これが流行して下水に大量に入ってくると下水処理場からも相当量が排出されてしまいます。ただし我が国の下水処理場の大半は水道水源の下流にありますので、汚染の可能性があるところは多くありません。
 対策として水道の浄水処理では、浮遊物ができるだけ少なくなるような措置をしています。また流行した場合は関連機関が連絡を取り合い、利用者を含め皆が注意して汚染を防ぐことになります。
                  クリプトスポリジウムの過去の事件 大阪府立公衆衛生研究所HP



ノロウイルス(これも新たな汚染。病状は同じくそんなにひどくない)
 
ノロウイルスは最近生態の解明が進んでいます。どうも食あたりなどお腹をこわしたときの犯人の多くが、このウイルスのようです。
 昔から食あたりなどといわれてきた症状ですが、遺伝子レベルの分析技術が進み、犯人の多くがノロウイルスであることがわかってきました。ノロウイルスによる発症は季節的に変わり、11月くらいから2月くらいの冬に多く発生しています。生ものを食べることが多いためのようです。
                  ノロウイルスの解説